依然として続く物価高は、日々の暮らしに重くのしかかっています。特に年金で生活するシニア世代にとっては、家計のやりくりが大きな課題ではないでしょうか。

実際に、どれほどの世帯が生活に厳しさを感じているのか、データで確認してみましょう。

70歳代世帯の生活実感1/6

70歳代世帯の生活実感

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、70歳代の世帯では「ゆとりがない」と感じている割合が、二人以上世帯・単身世帯のいずれにおいても87%にのぼり、大多数が家計に厳しさを感じている実態が浮き彫りになりました。

さらに、その主な理由として半数以上の世帯が「物価上昇」を挙げており、現在の経済状況が生活に与える影響の大きさがうかがえます。

このような状況で、家計の助けとなるのが、公的年金に上乗せして受け取れる「年金生活者支援給付金」です。

次回の年金支給日は6月15日です。4月の支給日はすでに過ぎ、この6月の支給日には2026年度の改定率が適用された4月・5月分の年金が支給されます。

ご自身が給付金の対象になるのか、いくら受け取れるのかを事前に把握しておくことは、物価高の時代を乗り切るために重要です。

この記事では、物価高への対策として改めて確認したい「年金生活者支援給付金」の制度内容と、受給するためのポイントを詳しく解説します。

1. 老後の年金、いくらもらえる?受給額の現状と個人差

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、公的年金の平均受給月額は、国民年金(老齢基礎年金)で約5万円、厚生年金(国民年金部分を含む)では約15万円です。

国民年金の平均月額(男女全体・男女計)2/6

国民年金の平均月額(男女全体・男女計)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の平均月額(男女全体・男女計)3/6

厚生年金の平均月額(男女全体・男女計)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

ただし、これらの図からもわかるように、実際の受給額は人それぞれ大きく異なります。厚生年金を月に30万円以上受け取る方がいる一方で、国民年金・厚生年金ともに月額3万円に満たない方もいるなど、その分布は非常に広範囲です。

公的年金とその他の所得を合計しても、所得が一定の基準に満たない場合には、「年金生活者支援給付金」の対象となる可能性があります。

2. 【2026年度改定情報】6月支給分から3.2%増額→老齢・遺族:5620 円、障害:1級7025 円 2級5620 円」

年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定基準額を下回る年金受給者の生活を支えるため、2019年に始まった制度です。この給付金は、2カ月に一度、公的年金に上乗せされる形で支給されます。

受給している年金の種類によって、以下の3つの給付金が用意されており、それぞれ支給要件や金額が異なります。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

2.1 2026年度の具体的な支給額はいくら?

2026年度の年金生活者支援給付金の額は、物価の変動などを反映して、前年度から3.2%引き上げられることが決まっています。

【2026年度の月額】

  • 老齢年金生活者支援給付基準額:5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:1級 7025円・2級 5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:5620円

老齢年金生活者支援給付金については、この基準額をもとに、保険料の納付済み期間などに応じて個別の支給額が計算されます。

これらの金額は月額のため、実際の支給時には2カ月分がまとめて年金に上乗せされます。例えば、基準額を満額受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年間では約6万7000円が支給されることになります。

ちなみに、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。

※2025年3月時点で認定されている方の平均給付額です。

3. 基礎年金とは別振込で支給される「年金生活者支援給付金」の対象者は?

それでは、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な要件を見ていきましょう。

まず、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれの基礎年金(障害基礎年金または遺族基礎年金)を受け取っていて、なおかつ前年の所得が479万4000円以下の方が対象です。

この所得の判定には、障害年金や遺族年金のような非課税収入は含まれません。また、扶養親族の人数に応じて所得基準額は上がります。

一方で、「老齢年金生活者支援給付金」は、所得以外にもいくつかの要件を満たす必要があります。

3.1 「老齢年金生活者支援給付金」の対象となる具体的な条件

老齢年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たす方が対象となります。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税である
  • 前年の公的年金などの収入金額と、その他の所得(給与所得や利子所得など)の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下である

老齢年金生活者支援給付金の所得判定でも、障害年金や遺族年金などの非課税収入は計算に含めません。

また、所得が基準額を少しだけ超えてしまい、給付の対象から外れる方との公平性を保つために、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度も設けられています。

補足的老齢年金生活者支援給付金について

前年の所得合計額が基準額を超えていても、昭和31年4月2日以降生まれの方で90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方で90万6700円以下であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

この給付金は、所得額に応じて支給額が段階的に減っていく仕組みです。

4. 【要注意】年金生活者支援給付金は「申請しないともらえない」制度

重要なポイントとして、年金生活者支援給付金は自動で支給されるわけではなく、ご自身で請求手続きを行う必要があります。対象者であっても、何もしなければ年金に上乗せされることはないため注意が必要です。

すでに年金を受け取っている方で、所得の減少などによって新たに給付金の対象となった場合には、毎年9月1日以降に日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が送付されます。

4.1 9月頃に届く「緑の封筒」とは?すでに年金受給中の方へ

※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。

また、これから65歳になり老齢基礎年金の請求手続きをする方には、誕生日の3カ月前に送られる年金の請求書に、給付金の請求書が同封されています。必要事項を記入のうえ、年金の請求書とあわせて提出しましょう。

4.2 手続きは初回のみ?一度申請すれば翌年以降ももらえる?

この給付金は、一度申請して受給が決まれば、支給要件を満たしている限り、翌年度以降に改めて手続きをする必要はありません。

継続して支給されるかの判定は、前年の所得をもとに毎年自動的に行われ、その結果は10月分(12月支給分)から1年間適用されます。もし対象から外れた場合は、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。

なお、毎年度(4月分から)の支給額については、毎年6月上旬に送付される「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」および「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認できます。

5. まとめ:物価高に備えるために、利用できる公的制度を正しく活用しよう

今回は、物価高騰が続く中で家計の支えとなる年金生活者支援給付金について、制度の仕組みや手続き方法を解説しました。この給付金を受け取るためには請求手続きが必須です。ご自身が対象かもしれないと感じた方は、忘れずに申請を検討してみてはいかがでしょうか。

年金額も物価上昇にあわせて改定されますが、上昇ペースに追いついていないのが現状です。今後も物価の上昇が続くと見込まれるため、インフレへの備えはますます大切になるでしょう。

公的な支援制度を上手に活用しつつ、ご自身の状況にあわせて株式や投資信託などを通じた資産運用を考えてみることも、インフレに負けない老後資金を準備するための一つの選択肢といえます。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

マネー編集部社会保障班