「老後2,000万円問題」が話題となってから間もなく7年が経とうとしています。

この7年、新たに話題となっているのが「物価上昇」です。

7年前からさまざまなモノ・サービスの値段が上がり、日々の生活に必要なお金が増加しています。

「老後に向けて貯蓄をしていかないといけない」一方で、「老後のために貯蓄できる余裕資金がない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

FPである筆者の元にも、同じような悩みを持っている方が多くご相談にいらっしゃいます。

老後までまだ時間のある若い世代、老後をまもなくに控えた50歳代、また、まさに年金生活をしながら貯蓄を切り崩している年金世代も、実は同じ悩みを抱えております。

今回は、そんな「今の年金受給世代」の実態について解説していきます。

1. 「生活苦しい」高齢者は5割超。

はじめに、現代の高齢者の暮らしについて、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」を参考に見ていきましょう。

同調査に示されている高齢者世帯の生活意識は、以下のとおりです。

  • 大変苦しい:25.2%
  • やや苦しい:30.6%
  • 普通:40.1%
  • ややゆとりがある:3.6%
  • 大変ゆとりがある:0.6%

「大変苦しい」と「やや苦しい」を合算すると、生活が「苦しい」と感じている人は55.8%に達しています。

高齢者世帯では、「普通」と答えた人の割合を上回り、「苦しい」と感じている人のほうが多い結果となりました。

2. 70歳代夫婦世帯のリアルな月の生活費はどのくらい?

では、70歳代の夫婦は毎月どのくらいの費用で生活しているのでしょうか。

2026年3月10日に総務省統計局が公表した総務省統計局「家計調査報告家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもに、70歳代の平均的な生活費を見ていきます。

 

二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の家計収支 -2025年-

出所:総務省統計局「家計調査報告家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

2.1 70歳代の支出

  • 70〜74歳:消費支出28万5844円・非消費支出3万9127円
  • 75歳以上:消費支出24万8460円・非消費支出3万1563円

消費支出だけで厚生年金のモデル夫婦の金額である月23万円台を超えています。老後に関しても非消費支出についてあらかじめ考えておくことは大切です。

2.2 70歳代の実収入

  • 70〜74歳:28万7725円
  • 75歳以上:25万2798円

2.3 70歳代の家計収支

  • 70〜74歳:▲3万7245円
  • 75歳以上:▲2万7225円

家計収支は70歳代前半で4万円近く赤字となっています。75歳でも3万円近く赤字ですから、何で補填するかが重要でしょう。

ちなみに65~69歳の月の赤字は5万1287円で5万円超です。年代により家計収支に変化が見られますね。

3. 70歳代夫婦世帯の平均貯蓄額はいくら?中央値との差も解説

続いて、70歳代の夫婦世帯がどれくらいの貯蓄を保有しているのか、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」から確認していきます。

※ここでいう金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)

3.1 「70歳代・二人以上世帯」貯蓄額の平均・中央値

  • 平均:2416万円
  • 中央値:1178万円

平均の貯蓄額は2000万円を超えているものの、中央値はおよそ1100万円台にとどまっており、その差は大きいといえます。

老後は生活費の補填に加えて、旅行や趣味、親族との交際費、車の維持や買い替え、家電の更新、病気や介護にかかる費用など、想定以上の出費が生じる場面も少なくありません。

こうした点を踏まえると、老後に向けて十分な貯蓄を用意するためには、早い段階から計画的に備える工夫が重要だといえるでしょう。

4. 【老後】厚生年金と国民年金の平均月額はいくら?

最後に厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金・国民年金の平均年金月額を確認しましょう。

厚生年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。

4.1 厚生年金《平均年金月額》

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

国民年金(老齢基礎年金)の月額についても見ていきます。

国民年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

4.2 国民年金《平均年金月額》

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

たとえば、夫が厚生年金、妻が国民年金を受給する夫婦世帯の場合、年金収入の合計はおよそ22万円となります。

上記を、前述した「生活費の支出額」と照らし合わせると、年金収入だけでは不足することがわかります。

将来受け取れる年金額を確認する手段としては、ねんきんネットを利用すると便利です。

まずは自身の年金見込み額を把握し、老後資金の準備に役立てていきましょう。

5. 老後2000万円問題もあくまで平均。自分の老後を考えよう

今回は、今の年金受給世代の貯蓄額や収入について解説しました。

将来受け取れる年金額は、現役世代の働き方や収入によって大きく異なります。

老後2,000万円問題もあくまで平均値ですので、改めて自分自身が老後必要な資金を確認しておくと安心です。

また、「2,000万円」を65歳時点で準備している世帯は約3割ほどですが、このような世帯も将来資金について不安を抱えているのが実態です。

物価上昇により、今よりも多くの生活費が必要な時代がやってくるかもしれません。

では実際にはどのくらい準備が必要なのか?そこまではまだ誰にもわかりません。

物価が上昇しても、自分自身の大切なお金の価値を守っていく方法を見つけて始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料