老後の生活を支える制度にはさまざまなものがありますが、その多くは自分から申請しないと受け取れないことをご存知でしょうか。
例えば、老齢年金に上乗せされる「加給年金」や、所得が一定基準を下回る場合に支給対象になる「年金生活者支援給付金」などが該当します。
また、働くシニア世代にとっても「再就職手当」や「高年齢雇用継続給付」といった支援制度があります。
今回は、受給資格がありながら見過ごしがちな《申請が必要な公的なお金》について、種類や要件をわかりやすく解説します。
記事の後半では「高齢者世帯の収入実態」もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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1. 意外と多い?申請しないと受け取れない公的なお金
老齢年金や障害年金、遺族年金といった公的年金は、生活の基盤となる重要な制度です。
しかし、これらの年金は受給要件を満たせば自動的に支給が開始されるわけではありません。
年金を受け取るためには、ご自身で「年金請求書」を提出し、請求手続きを行う必要があります。
国や自治体が提供する「手当」「給付金」「補助金」なども、その多くが申請手続きを必要とします。
もし申請期限を守らなかったり、必要な書類がそろっていなかったりすると、本来受け取れるはずのお金が減額されたり、受け取れなくなったりするケースも考えられます。
公的な支援制度を必要な時に確実に利用するためには、どのような支援が対象になるのかを把握し、手続きをきちんと進めることが重要です。
2. 老齢年金に上乗せされる2つの給付金【申請必須】
老齢年金を受給している方が特定の条件を満たすと、通常の年金額に加えて給付を受けられる制度が2つあります。
2.1 1. 年金の家族手当「加給年金」
加給年金は、しばしば「年金の家族手当」とも呼ばれる制度です。
厚生年金の加入期間などの条件を満たした方が、年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給されます。
加給年金の支給要件
- 厚生年金の被保険者期間が20年以上(※)ある方:65歳に到達した時点(または定額部分の支給が始まる年齢に達した時点)
- 65歳到達後(または定額部分の支給開始後)に被保険者期間が20年以上(※)となった方:在職定時改定や退職改定のタイミング(または70歳到達時)
(※)共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性や坑内員・船員は35歳)以降に15年~19年ある場合も含まれます。
上記のいずれかのタイミングで、「65歳未満の配偶者」や「18歳になった年度の末日を迎えていない子、または1級・2級の障害を持つ20歳未満の子」がいる場合に、年金が加算されます。
ただし、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している間は、配偶者加給年金額の支給は停止されます。
2025年度の加給年金額
2025年度における加給年金の年額は、対象者に応じて以下のようになっています。
- 配偶者:23万9300円
- 子ども(1人目・2人目):各23万9300円
- 子ども(3人目以降):各7万9800円
また、老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者加給年金額には3万5400円から17万6600円の特別加算が上乗せされます。
振替加算の仕組み
加給年金の対象である配偶者が65歳に達すると、加給年金の支給は終了します。
しかし、その配偶者が自身の老齢基礎年金を受給する際に、特定の条件を満たしていれば、年金額に「振替加算」が行われる仕組みです。
2.2 2. 所得が一定以下の年金生活者を支える「老齢年金生活者支援給付金」
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している方のうち、所得が一定の基準を満たさない場合に支給される支援です。
この給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給要件が定められています。
ここでは「老齢年金生活者支援給付金」について詳しく見ていきましょう。
老齢年金生活者支援給付金を受け取るための条件
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
- 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税であること
- 前年の公的年金などの収入額(※1)と、それ以外の所得の合計額が、基準額以下であること(昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下)(※2)
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は合計額に含みません。
※2 基準額を超えても一定額以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。具体的には、昭和31年4月2日以降生まれで80万9000円超90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれで80万6700円超90万6700円以下の方が対象です。
給付基準額について
2025年度の老齢年金生活者支援給付金における給付基準額は、月額5450円となっており、前年度から2.7%引き上げられました。
実際の給付額は、この基準額を基に、保険料の納付状況に応じて計算されます(後述の①と②の合計)。
給付額の計算方法
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1151円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
例えば、国民年金保険料を40年間すべて納付した方の場合、2025年度は月額5450円(年額6万5400円)が支給される計算です(ただし、昭和16年4月1日以前に生まれた方は計算方法が異なります)。
なお、保険料免除期間に適用される金額は、毎年の老齢基礎年金額の改定に伴い変動します。
3. 働くシニア向け!雇用保険から支給される3つの手当・給付金
次に、働き続けるシニア世代に関わりの深い、就労関連の手当や給付金を見ていきましょう。
シニアの就労支援制度は整備が進んでいますが、国税庁『令和5年分 民間給与実態統計調査』によると、60歳を境に収入が減少する傾向が見られます。
若い世代と同じように就職活動や仕事を続けることが難しい場合もあるため、雇用保険に関連する3つの支援制度を知っておくことが大切です。
※国税庁『令和5年分 民間給与実態統計調査』による年齢階層別平均給与:50歳代後半男性712万円、女性330万円、60歳代前半男性573万円・女性278万円、60歳代後半男性456万円・女性222万円
3.1 1. 65歳未満の早期再就職を支援する「再就職手当」
再就職手当は、失業後の早期の再就職を促すための制度です。
失業してから再就職、または事業を開始するまでの期間が短いほど、多くの手当を受け取れる仕組みになっています。
再就職手当の支給要件
- 対象者:雇用保険の受給資格があり、基本手当を受けられる方
- 支給要件:対象者が再就職して雇用保険の被保険者になるか、事業主として被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っているなど、定められた要件を満たすこと
再就職手当の給付率
- 手当の額は、就職日の前日時点での基本手当の支給残日数に応じて、以下の給付率で計算されます(1円未満は切り捨て)。
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の70%」
この手当を受け取った後、再就職先で6カ月以上働き、その間の賃金が離職前より低い場合には、「就業促進定着手当」の対象となることもあります。
3.2 2. 60歳から65歳未満で働き続ける人が対象「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付は、60歳から65歳未満の方が働き続ける中で、賃金が60歳時点と比べて低下した場合に支給される支援金です。
高年齢雇用継続給付の支給要件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が通算5年以上ある、60歳以上65歳未満の方
- 支給条件:60歳時点の賃金と比較して、75%未満に低下した状態で就労を継続していること
高年齢雇用継続給付の支給率
- 支給額:各月に支払われる賃金の最大10%(※)に相当する額
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は15%
老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、この給付金を受給する場合、在職老齢年金制度による支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が年金から引かれる点に注意が必要です。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%
3.3 3. 65歳以上で失業した場合の「高年齢求職者給付金」
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が仕事を辞め、失業状態になった場合に受け取れる一時金です。
高年齢求職者給付金の支給要件
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で、失業状態にある方
- 支給要件:以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 離職日より前の1年間に、被保険者期間が合計で6カ月以上あること
- 失業の状態にあること(就職への積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態)
高年齢求職者給付金の給付額
- 支給される額は、雇用保険の被保険者であった期間に応じて決まります。
- 被保険者期間が1年未満の場合:基本手当の30日分に相当する額
- 被保険者期間が1年以上の場合:基本手当の50日分に相当する額
65歳未満の方が受け取る基本手当(いわゆる失業手当)が原則4週間に1度支給されるのに対し、高年齢求職者給付金は一時金として一括で支給される点が特徴です。
4. 高齢者世帯の収入実態「43.4%が公的年金のみで生活」
厚生労働省が発表した『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』を基に、高齢者世帯(※)の収入状況を確認してみましょう。
高齢者世帯全体の平均所得を見ると、「公的年金・恩給」が63.5%を占め、次いで就労による「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%と続きます。
ただし、これはあくまで平均値です。
実際に「公的年金・恩給」を受給している世帯に限定すると、その収入のすべてが公的年金である世帯は43.4%に達することが明らかになっています。
※高齢者世帯:65歳以上の人のみ、または65歳以上の人と18歳未満の人で構成される世帯
4.1 総所得に占める公的年金・恩給の割合
- 総所得のうち公的年金・恩給が100%を占める世帯:43.4%
- 総所得のうち公的年金・恩給が80~100%未満の世帯:16.4%
- 総所得のうち公的年金・恩給が60~80%未満の世帯:15.2%
- 総所得のうち公的年金・恩給が40~60%未満の世帯:12.9%
- 総所得のうち公的年金・恩給が20~40%未満の世帯:8.2%
- 総所得のうち公的年金・恩給が20%未満の世帯:4.0%
このデータから、高齢者世帯全体では稼働所得なども収入の一部を構成しているものの、年金受給世帯に焦点を当てると、約半数が公的年金だけで生活している実情がうかがえます。
5. 申請手続きを忘れず、受け取れる支援を活用しよう
ここまで、申請しないと振り込まれない「シニア向けの公的なお金」を5つご紹介しました。
本記事で解説した「加給年金」や「年金生活者支援給付金」、働く方向けの「再就職手当」や「高年齢雇用継続給付」など、多くの公的支援は申請しなければ受け取れません。
受給できる可能性のある支援を見逃さないためにも、ご自身が要件に該当するかを確認し、忘れずに手続きを行うことが大切です。
公的年金のみで生活する世帯が少なくない現状を考えると、物価の上昇に備えるためには、こうした給付金を活用するとともに資産形成などの自助努力も必要になるでしょう。
対象となる支援を活用するだけでなく、少しでも早い段階から老後への備えについて考えてみてはいかがでしょうか。
※この記事は再編集記事です。







