6. 1億円を目指すより“破綻しない仕組み”をつくる
老後資金は、単純に大きな目標額を掲げれば解決する問題ではありません。むしろ重要なのは、老後の生活が破綻しない仕組みをどう作るかという視点です。
たとえば、
- 生活費が膨らみすぎないよう支出を管理する
- 年金以外の小さな収入源(パート・不動産・副業など)を確保する
- リスクを抑えた長期投資で資産をゆっくり育てる
- 医療・介護の急な出費に備えて保険や預金を用意しておく
こうした複数の対策を組み合わせることで、老後の家計は安定しやすくなります。
1億円の貯金があっても、支出が大きすぎればすぐに尽きてしまいますし、逆にそこまで資産がなくても、支出と収入のバランスを整えれば長く安心して暮らすことができます。
重要なのは“額の大きさ”ではなく、“仕組みの強さ”。長期的に破綻しない家計を作れるかどうかが、安心できる老後生活の決め手になります。
7. まとめにかえて:老後1億円の“正解”は人それぞれ。必要なのは自分の試算
老後に1億円あれば心理的なゆとりが生まれるのは確かですが、それが“絶対に必要な金額”というわけではありません。
住居費、健康状態、家族構成、どんな暮らしを望むのか……これらによって必要な資金は大きく変わります。
大切なのは、平均値やモデルケースではなく、“自分自身の数字”で試算すること。
毎月の不足額、インフレによる生活費の上昇、長寿化の影響といった要素を踏まえて、資産を無理なく長持ちさせる設計をつくることが、安心した老後につながります。
「老後1億円」という目安に振り回されるのではなく、自分の家計に必要な金額を冷静に積み上げる。これこそが、最も現実的で失敗のない老後資金の考え方です。
参考資料
- J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査[二人世帯調査](2025年)」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 国土交通省「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)10月分」
- 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
- 厚生労働省「令和4年度 生涯医療費」
- J-FREC金融経済教育推進機構「重点テーマ:資産形成」
和田 直子