11月は、家計を振り返る絶好のタイミングです。冬の光熱費や年末年始の出費、さらには来年に向けた準備を考えると、「今のお金の状況」をしっかり把握しておきたいところ。特に老後資金については、現役時代とは違い収入が限られるため、計画性が重要です。
今回の記事では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額に焦点を当てます。平均は1923万円と聞くと安心感がありますが、実際には中央値が800万円と大きく下がり、貯蓄ゼロの世帯も2割を超えるなど、現実は決して一様ではありません。
老後を安心して過ごすためには、今ある資産をどう使うか、そして必要ならどんな収入源を確保するかを考えることが欠かせません。
この記事では、70歳代の二人以上世帯における平均貯蓄額と中央値見ていきながら、老後生活について考えていきます。
1. 【70歳代・二人の老後】みんなの「平均貯蓄額」と「中央値」はいくら?
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」より70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認していきます。
※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
「70歳代・二人以上世帯」の貯蓄額は平均1923万円。ただし、この数字は一部の富裕層が平均を押し上げているため、実際の暮らしとは少し異なります。
より実態に近い中央値は800万円。つまり、多くの世帯はこのあたりの水準に集中しているということです。
世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。
- 金融資産非保有:20.8%
- 100万円未満:5.4%
- 100~200万円未満:4.9%
- 200~300万円未満:3.4%
- 300~400万円未満:3.7%
- 400~500万円未満:2.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:6.4%
- 1000~1500万円未満:10.2%
- 1500~2000万円未満:6.6%
- 2000~3000万円未満:8.9%
- 3000万円以上:19.0%
- 無回答:3.5%
一方で、貯蓄ゼロの世帯が全体の約2割(20.8%)を占めています。逆に、3000万円以上の貯蓄を持つ世帯も約2割(19.0%)あり、資産状況には大きな差があります。
さらに細かく見ると、100万円未満の世帯が5.4%、100~200万円未満が4.9%、200~300万円未満が3.4%と、貯蓄が少ない世帯も一定数存在します。
その一方で、1000~1500万円未満の世帯が10.2%、1500~2000万円未満の世帯が6.6%、2000~3000万円未満の世帯が8.9%と、まとまった貯蓄を持つ世帯も存在しています。
こうした差は、退職金や現役時代の収入、相続、健康状態など、さまざまな要因によって生まれています。
公的年金も、加入状況によって受給額に大きな差があるため、年金だけで生活するのは、貯蓄が少ない世帯にとって厳しい現実です。
老後を安心して過ごすためには、世帯の状況に合わせた生活設計の見直しが欠かせません。
たとえば、健康なうちはパートタイムで働く、不動産収入や投資を検討するなど、選択肢はいくつもあります。大切なのは、こうした備えを早めに考えておくことです。
