iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数が、2026年3月末時点で約392万8000人に達し、過去最多を更新しました。前年同月比+8.2%の伸びとなっています。
背景には、2024年からスタートした新NISAとの併用で、老後資金準備の選択肢が大きく広がっているのが現状です。
そこで本記事では、iDeCoが過去最多を更新した背景、NISAとの違いと賢い使い分け、年収500万円・月2万円の積立で30年続けた場合の節税シミュレーションまでを紹介します。これから資産形成を考える際の参考にしてみてください。
1. iDeCo加入者が約393万人「1か月3.9万人の増加」急増を支える「2つの追い風」
2026年3月末時点のiDeCo加入者数は約392万8000人で、前年同月比+8.2%の増加となりました。1カ月の新規加入者は3万9261人にのぼります。
1.1 2026年3月の新規加入者(被保険者区分別)
- 第1号被保険者(自営業など):5587人
- 第2号被保険者(会社員・公務員):3万2147人
- 第3号被保険者(被扶養配偶者):1134人
加入者全体の平均掛金は月額1万6655円、自営業など第1号被保険者では平均月額2万7221円と高水準で推移しています。
この伸びを支えるのは2つの追い風です。1つは2024年1月に始まった新NISAの普及で、口座開設や積立投資が身近になったこと。もう1つは2024年12月に施行された制度改正で、公務員や確定給付企業年金(DB)加入者の拠出限度額が月1万2000円から月2万円に引き上げられたことです。
2. 【徹底比較】iDeCoと新NISAは何が違う?「いつ使うか」で決める賢い使い分け
iDeCoとNISAはどちらも運用益が非課税という共通点はあるものの、制度設計はまったく異なります。両者の主な違いは以下のとおりです。
2.1 iDeCoとNISAの主な違い
- 拠出時の税制優遇:iDeCoは掛金全額が所得控除の対象/NISAはなし
- 運用益の課税:両制度ともに非課税
- 受取時の課税:iDeCoは退職所得控除または公的年金等控除の対象/NISAは非課税
- 年間拠出限度額:iDeCoは加入区分により14.4万〜81.6万円/NISAは合計360万円
- 引き出し制限:iDeCoは原則60歳まで不可/NISAはいつでも可能
- 手数料:iDeCoは加入時2829円+掛金納付の手数料105円/NISAは原則無料
なお、iDeCoの加入中手数料(掛金拠出時)は、物価や人件費の上昇に伴い、2027年1月の掛金引落分から「105円」から「120円」へと改定されることが決定しているため注意が必要です(新規加入時手数料2829円は変更なし)。
両者を賢く使い分けるコツは、毎月の積立予算を「いつ使うお金か」で振り分けることです。
住宅頭金・教育費・予備資金など60歳前に使う可能性がある資金は、いつでも引き出せるNISAに回しておくのが安心です。一方、原則60歳まで引き出せないiDeCoは、その性質から「老後専用の長期資金」と割り切って活用するのが現実的です。
特に注目したいのは、iDeCo固有の強みである所得控除のメリットです。掛金が全額所得控除されるため、所得税率が高い人ほど節税効果も大きくなります。
年収が高い会社員や自営業者にとっては、運用益の非課税効果に加えて、毎年の所得税・住民税の軽減も期待できる点が大きな魅力です。
予算に余裕があれば、両方の制度を併用するのが王道です。流動性が必要な資金はNISA、老後専用の長期資金はiDeCoという棲み分けで、家計の柔軟性と老後の備えを同時に手に入れられます。
3. iDeCoシミュレーション「月2万円×30年運用」結果はどうなる?
実際にiDeCoでどれだけお得になるのか、年収500万円の会社員(所得税率10%・住民税率10%)が月2万円を30年間積み立てた場合で試算します。
【前提条件】
- 年収:500万円(所得税率10%・住民税率10%)
- 拠出額:月2万円(年24万円・30年累計720万円)
- 運用利回り:年5%(複利)
- 対象期間:30年間
3.1 ①所得控除による節税効果:iDeCo固有のメリット
月2万円×12カ月=年間24万円が全額所得控除となるため、年間4万8000円(24万円×20%)の税負担が軽くなります。30年間の累計節税額は144万円です。これはNISAにはないiDeCo独自のメリットで、同水準の収入を維持して納税し続ける限り、毎年手元に残る計算になります。
3.2 ②運用益の非課税効果:NISAと共通のメリット
月2万円を年利5%で30年運用すると、最終資産額は約1631万円。投資元本720万円を差し引くと運用益は約911万円となります。2026年4月1日に厚生労働省「公的年金シミュレーター」で追加されたiDeCoの試算機能をもとにシミュレーション結果をみていきましょう。
通常の課税口座なら約185万円(20.315%)の税金がかかりますが、iDeCoでもNISAでも運用中は非課税です。ただしこの恩恵はiDeCo固有のものではなく、NISAでも同じく受けられる点に注意が必要です。
3.3 ③受取時の課税:ここはNISAのほうが有利
iDeCoとNISAは「出口」で大きく異なります。NISAは引き出し時も全額非課税で、運用益をそのまま手元に残せます。一方、iDeCoは受取時に課税対象となり、一時金で受け取れば退職所得、年金形式で受け取れば公的年金等として扱われます。
ただし、iDeCoには退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、受取方法を工夫すれば税負担を抑えられます。たとえば30年加入で1631万円を一時金で受け取るケースでは、退職所得控除額が1500万円となり、税金がかかる対象(課税退職所得)は、控除しきれなかった分の半分にあたる「約66万円」にまで圧縮されます。実際の税額は、この約66万円に所定の税率をかけた数万円程度に抑えられます。ただし、会社の退職金と合算されると控除枠を超えることもあるため、出口戦略の検討は欠かせません。
つまり、月2万円×30年の積立期間中、現在の年収を維持して納税し続けた場合、iDeCo独自の大きなメリットとして入口の所得控除144万円が得られます。運用益の非課税はNISAと共通、出口は完全非課税のNISAに分があります。
iDeCoは「現役時代の所得税・住民税を軽くしたい人」、NISAは「いつでも非課税で引き出したい人」に向くと押さえておきましょう。
4. NISAとの併用で「節税+老後資金」の二刀流が現実解!
今回は、iDeCoの最新の調査結果をもとに、そのメリットや新NISAとの賢い使い分けについて解説しました。iDeCoは「原則60歳まで引き出せない」という制限があるものの、毎年の所得税や住民税を減らせるという強力なメリットがあります。一方で、いつでも引き出せる新NISAは、ライフイベントに合わせた柔軟な資金準備に最適です。
つまり、どちらか一方を選ぶのではなく、将来の目的やお財布事情に合わせて「併用」することこそが、これからの賢い資産形成のスタンダードと言えます。「まだ始めていない」「難しそう」と感じている方も、無理のない金額からはじめてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター」
- iDeCo公式サイト「業務状況」
- iDeCo公式サイト「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2026年3月)」
- iDeCo公式サイト「お知らせ「公的年金シミュレーター」の新機能追加について」
- iDeCo公式サイト「リーフレット「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」」
苛原 寛