4. 働きすぎると「年金が減る」って本当?在職老齢年金について
「年金収入」と「就労による収入」の合計が一定の基準を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。
この仕組みが「在職老齢年金制度」です。
老後も働きながら厚生年金に加入している場合、年金と給与収入を合算した金額が基準を上回ると、年金が減額または支給停止されます。
支給停止の判定には、年金収入と就労収入を合算した「総収入額」が用いられ、この基準額を「支給停止調整額」と呼びます。
2025年度の支給停止調整額は51万円とされており、この額を超えると、超過分に応じて年金が減額または停止となってしまいます。
年金がどの程度減額されるかは、次の計算式で確認できます。
在職老齢年金による調整後の年金支給月額 = 基本月額※1 −(基本月額 + 総報酬月額相当額※2 − 支給停止調整額)÷ 2
たとえば、基本月額が15万円で総報酬月額相当額が30万円の場合、合計は45万円となり、厚生労働省が定める支給停止調整額の51万円を下回るため、年金は減額されず満額受け取れます。
一方、基本月額が15万円で総報酬月額相当額が37万円になると、合計は52万円となり、基準額を超えるため年金は5000円減額されます。
なお、今後は「高齢者の就労促進」を目的として、支給停止調整額は段階的に引き上げられる見通しです。
※1 基本月額:加給年金を除いた厚生年金の月額
※2 総報酬月額相当額:直近1年間の標準賞与額を12で割った額
4.1 在職老齢年金制度の「支給停止調整額」が来年の春から見直しに
2025年6月に年金制度改正法が可決され、2026年4月からは在職老齢年金制度における支給停止基準が「年金と給与の合計収入額」で月62万円に引き上げられる予定です。
この改正によって、「働きたい人が働きやすい環境」を整えるための制度見直しが進み、年金受給と就労の両立がより柔軟にできることが期待されています。
老後も働くことを検討している方は、ご自身の年金額と収入のバランスを踏まえ、どの範囲まで支給が維持されるのかを事前にシミュレーションしておくと安心です。

