「もしも認知症などで判断能力を失った場合、自分の銀行口座からお金を引き出せなくなるかもしれない」
そんな不安を抱えている人は意外と多いようです。しかし、それは本当なのでしょうか?
現在、日本では高齢化とともに認知症の患者数やその前段階とされる軽度認知障害(MCI)を含めると、65歳以上の約28%にあたる人たちが何らかの認知機能の低下を抱えていると推計されています。
加えて、65歳以上の単身高齢者が増加しており、判断能力を失ったときに頼れる家族がいないケースも増えてきています。
この記事では、口座凍結のリスクと、その備え方を中心に、「おひとりさま」に向けた財産管理の視点を整理します。
1. 口座凍結は本当に起こる?どんな場合に制限されるのか解説!
銀行口座が「凍結」されると聞くと、犯罪や相続時の話を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、実は本人が認知症などで判断能力を失った場合にも、同様の制限がかかる可能性があります。
金融機関では、顧客本人が自分の意思で取引内容を理解し、同意できることを前提に手続きを行っています。
そのため、意思疎通が難しくなったり、判断能力が低下していると見なされた場合、銀行員の判断で「本人確認が不十分」とされ、入出金や振込、定期預金の解約などの取引を一時的に停止することがあります。
全国銀行協会も「判断能力が低下した場合には、取引制限が発生することがある」としており、認知症リスクと財産凍結の問題は決して他人事ではありません。
また、家庭裁判所によって成年後見制度が開始された場合も、後見人以外の取引が制限されます。
つまり、家族であっても、法的な代理権を持たない限り、本人の口座からお金を引き出すことはできません。
このような制限は、本人の資産を守る目的で設けられていますが、口座の入出金や振込、解約などが制限され、生活費や医療費の支払いもできない事態になる可能性があります。
特におひとりさまの場合、判断能力の低下を誰も気づかず、口座が使えなくなって初めて問題が発覚するというケースも報告されています。