5. 【年金が増えても実質目減り】老齢年金から《天引きされるお金》とは?
公的年金は、賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。
2025年1月、厚生労働省は2025年度(令和7年度)の年金額を、前年度より1.9%引き上げることを公表しました。
それにより公的年金は3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド(※)」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額が目減りしています。
物価の上昇に年金額が追い付いていないのです。
またシニアの多くは、下記の社会保険料や税金を老齢年金からの天引きで納めています。
- 介護保険料
- 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
- 個人住民税および森林環境税
- 所得税および復興特別所得税
年金見込み額は、日本年金機構の「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。
※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
6. 生活コストに備えて「老後資金」の不足額がどれくらいあるのかチェックしよう
今回は70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情について詳しく見てきました。
厚生労働省が公表した調査結果によれば、高齢者の半数以上が生活が苦しいと回答しています。
定年後は年金が生活を支える主な柱となりますが、受け取れる年金額というのは現役時代の収入に比べて大きく減るという方も珍しくありません。
そのため、年金で足りない生活費の部分については、これまで貯めてきた貯蓄を切り崩して生活費に充てているという方も多いです。
ただし、いまは物価高などの影響で生活コストは上がっています。
私たち現役世代が年金生活に入る頃には、もっと物価高が進んで今より生活コストが上がっていることも十分考えられます。
年金だけで生活が苦しくても「働いて収入を得れば大丈夫」と考える方もいるでしょう。
しかし、年齢を重ねるにつれ、さまざまな事情により就業することが困難になるケースも考えられます。
老後生活に困らないように、現役時代のうちからコツコツと老後資金を準備していくことを検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)9月分」
鶴田 綾

