涼しい風が吹き、健康について考えることが増える季節となりました。少子高齢化が進む日本において、医療費や介護費用は老後の生活に大きな不安を与える要素です。しかし、所得や収入が一定水準を下回る「住民税非課税世帯」には、これらの費用負担を大きく軽減する優遇制度が数多く設けられています。

たとえば介護保険料の減免制度もそのひとつです。ここでは、住民税非課税世帯が利用できる優遇制度の中から介護保険料の減免制度についてくわしく解説していきます。

※本稿では、住民税非課税世帯による介護保険料の「減額(軽減)」と特別な事情による「免除」の両方を含む、支払い負担を軽くする優遇措置全般を「減免」として表記します。

1. 住民税非課税世帯、「どんな人が当てはまる?」

私たちには、居住する自治体に「住民税」を納める義務があります。会社員の方は毎月の給与明細を見てみると、控除欄に住民税が徴収されているのを確認できるでしょう。

住民税は、所得割(前年の所得金額に応じて課税)と均等割(定額で課税)から構成されており、これらが一定の所得水準に満たない場合に非課税となります。世帯全員が所得割・均等割ともに非課税となる世帯を、一般的に「住民税非課税世帯」と呼びます。

非課税となる基準は、各自治体の条例で定める額が適用されるため、地域によって異なる場合があります。例えば東京23区内では、下記の条件のいずれかに当てはまる方は住民税の所得割・均等割とも非課税となる仕組みです。

  • 生活保護法による生活扶助を受けている方
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与収入で204万4000円未満)の方
  • 前年中の合計所得金額が以下の額以下の方
    →同一生計配偶者または扶養親族がいない場合:45万円以下
    →同一生計配偶者または扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円 以下

1.1 住民税非課税世帯には生活の負担を軽減する優遇制度がある

住民税非課税世帯の対象となると、医療や福祉、教育などさまざまな分野で優遇措置を受けられます。

たとえば、1ヵ月あたりの医療費が高額になると上限額を超えた金額が払い戻される制度があります。これを「高額療養費制度」といい、住民税非課税世帯以外も対象となる制度です。

《現行》患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額

《現行》患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額

出所:厚生労働省「第4回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会資料」

ただし、住民税非課税世帯は自己負担限度額が低く設定されており、70歳未満の住民税非課税世帯では1ヵ月あたりの自己負担限度額が3万5400円(多数回該当の場合2万4600円)となっています。

入院が長期に長引いたり、定期的な通院が必要になったりするときは医療費が高額になる傾向にありますが、この制度により所得が少ない方でも安心して医療にかかることができます。