個人事業主や退職者は、所得税額を確定させるために確定申告を毎年行います。会社員は年末調整で対応するのが一般的で、確定申告をするケースはあまり多くありません。

しかし、年金受給者も所定の要件を満たせば、確定申告が不要になります。この「確定申告不要制度」は、毎年の書類作成の手間を省くためにはぜひおさえておきたい制度です。

この記事では、確定申告不要制度の概要や注意点、申告が不要になるケースや必要なケースを解説します。

1. 確定申告不要制度とは

確定申告不要制度とは、年金受給者の確定申告の負担を軽減するための制度です。

年金は法律上「雑所得」として扱われるお金であり、所得税の課税対象です。65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上の年金を受給している場合、年金にかかる所得税は、源泉徴収されます。

自身が源泉徴収の対象となっている場合、本来なら確定申告により正確な所得額を計算して申告し、税金の過不足を精算しなければなりません。しかし、高齢になると税務署へ出向いたり確定申告に必要な書類を作成したりするのに、必要以上の時間がかかります。

確定申告不要制度により申告せずに済めば、税の手続きが簡素化され、年金受給者の負担も減ります。多くの人が該当するように制度設計されているため、毎年申告せずに済む人も多いでしょう。

次章では、年金受給者が確定申告しなくてもよいケースを解説します。