3. こんなときは確定申告不要?必要?
確定申告不要制度の条件は複雑ではありませんが、老後の収入状況やライフスタイルは人によって異なります。2つのシチュエーションを例に、確定申告が不要か必要かを解説していきます。
3.1 複数の公的年金を受け取っている場合
「公的年金等」には、65歳から受け取れる老齢年金以外にも、さまざまなものが含まれます。
- 障害年金:障害認定時に受け取れる年金
- 遺族年金:年金の被保険者が亡くなった際に、生計を維持されていた遺族が受け取れる年金
- 企業年金:企業が掛金を拠出して給付する年金
- iDeCo:個人で掛金を拠出・運用し、その運用結果をもとに給付額が決定する年金
そして、人によってはこれらの年金を併給する場合があります。たとえば「老齢基礎年金と遺族厚生年金」「障害基礎年金と老齢厚生年金」「老齢年金とiDeCo」といったような形です。
この場合は、公的年金等の収入が400万円を超えないかどうかに加えて「その年金が課税対象かどうか」もチェックしましょう。
たとえば、障害年金や遺族年金は非課税収入のため、いくら受給していても公的年金等の収入には含みません。
そのため、老齢年金と障害年金の合計受給額が400万円を超えたとしても、老齢年金のみの受給額が400万円以下なら、ほかの所得が20万円以下の場合に、確定申告が不要になります。
一方、企業年金やiDeCoの給付は課税対象であり、公的年金等の収入としてカウントします。そのため、老齢年金の年間受給額が年間300万円でも、企業年金やiDeCoの給付額が年間100万円を超える場合は、確定申告が必要です。
3.2 年金を受け取りながら働いている場合
収入の不安から、年金を受け取りつつ給与収入を得ている人は少なくないでしょう。給与を受け取る人は職場で年末調整を受けられる可能性が高いですが、年金所得は年末調整の対象外となるため、年金収入が400万円を超える場合は確定申告が必要になります。
また、給与所得も20万円超となると確定申告をしなければなりません。前述のとおり、給与所得控除は最低でも55万円が控除されるため、年間で75万円超の給与を得ている場合は、確定申告が必要です。一方、年金収入が400万円以下で、給与所得が75万円以下なのであれば、確定申告は不要です。
次章では、確定申告不要制度の注意点を解説します。