4. 「年収の壁」の今後

日本の年収の壁は、2025年度からようやく変化が見られました。所得税がかからないとされた「103万円の壁」は、今年度から「123万円の壁」に引き上げられる予定です。

久しく固定されていた年収の壁が引き上げられたことは、私たちの生活において、好影響をもたらすでしょう。

このほかの年収の壁にも動きが見られますが、こうした基準は今後も柔軟に変化していく仕組みが求められます。

たとえば、アメリカの所得税(連邦所得税)は、所得控除の仕組みに「標準控除」というものがありますが、これはインフレ調整により、年ごとに控除額が改定されています。

アメリカの単身世帯の標準控除額は、2023年は1万3850ドル、2024年は1万4600ドルでした。経済の実態にあわせて制度を変えていく、柔軟な仕組みが採用されています。

65歳以上の人は年金を受給するため、年金の改定額によっては住民税非課税世帯から課税世帯になる可能性があります。

年金の改定額も物価変動が影響するため、たとえ年金受給額が増えても、それにより住民税が課税され負担が増えてしまっては、本末転倒です。

年収の壁が物価などを基準に柔軟に設定できれば、年金や賃金がインフレにより増えても、基準となる金額を超えることは無くなるでしょう。

インフレによる物価上昇を目の当たりにしているからこそ、年収の壁も物価などに応じて基準を都度動かすなど、現実に即した制度設計が求められます。

5. まとめ

住民税非課税世帯になるには、単身世帯で年収155万円、夫婦世帯で年収211万円(配偶者は100万円または155万円)を超えないことが条件になります。この金額を1円でも超えると、住民税が課税されます。

住民税非課税世帯から外れれば、社会保険料の軽減や医療費支出の軽減は受けられません。経済の実態に応じた柔軟な制度設計や、年収の壁のさらなる見直しに、今後も注目が集まるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ