3. 非課税の「基準点」があることの弊害とは

住民税が非課税になる基準点があることで、これまで紹介してきたような恩恵はすべて失われます。

たとえば、医療費の自己負担限度額を見てみましょう。69歳以下で単身世帯の場合、年収155万円までなら住民税非課税世帯となるため、限度額は3万5400円です。しかし、年収が156万円になると、住民税が課税されてしまうため、限度額が一気に引き上がってしまうのです。

医療費の自己負担限度額

医療費の自己負担限度額

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」をもとに筆者作成

また、介護保険料も大幅に上昇する可能性があります。新宿区の介護保険料を例に見てみると、住民税非課税世帯の人の保険料は最高で年間5万1480円です。

しかし、住民税が課税された際の保険料は最低でも年間8万7120円で、3万5640円もの差が生まれてしまいます。

収入が基準点を1円でも超えてしまうと、年間約3万円が家計から出ていってしまうことになるのです。

介護保険料の決まり方

介護保険料の決まり方

出所:新宿区「介護保険料の決まり方」

住民税非課税の基準点をわずかでも超えてしまうと、住民税負担の増加に加えて社会保険料などの支出も増加します。たとえ1円の超過でも負担金額は大きく増えるため、収入が増えても結果的に損してしまうのです。

次章では、年収の壁の今後の展望について紹介します。