4. 「106万円の壁」が廃止に!そもそも年収の壁とは?
「年収の壁」とは、扶養内で働く人が一定額以上の年収を得た場合に、税金や社会保険料の負担が増える仕組みを指し、金額に応じて「◯◯万円の壁」と呼ばれます。
扶養内で働くことで本人の税金や社会保険料の負担が軽くなるだけでなく、扶養する配偶者も所得控除を受けられるため、世帯全体の税負担を抑えることが可能です。
この恩恵を受け続けるには、年収が一定の上限を超えないことが条件となるため、多くの人が「年収の壁」を意識して働いています。
2025年6月、国会で「年金制度改革関連法」が可決され、パート勤務者に適用されていた「106万円の壁(賃金月額8万8000円以上の基準)」が廃止されました。
4.1 パート主婦を悩ませていた「106万円の壁」が廃止される方針に
「106万円の壁」とは、一定の条件を満たす職場で働く場合に、社会保険への加入が義務付けられる年収の目安を指します。
この基準を超えると社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減少することで、場合によっては基準を超える前より収入が少なくなることもあります。
現行では、「従業員数が51人を超える企業(短時間労働者を除く)」に勤務し、かつ所定の条件を満たす場合には、パートやアルバイトでも社会保険の適用対象となります。
しかし、今回成立した年金制度改革関連法により、今後は「週20時間以上勤務していること」と「学生でないこと」の2つだけが適用要件として残ることになります。
では、この「106万円の壁」の撤廃と「最低賃金の引き上げ」は、どのようなつながりがあるのでしょうか。
4.2 「106万円の壁」の廃止によって、賃金引き上げによる働き控えは緩和される?
最低賃金の引き上げによって、同じ勤務時間でも得られる収入が増えるため、パートやアルバイトでは賃金改定前よりも早い段階で「106万円の壁」に達する人が増える恐れがあります。
しかし、「月額8万8000円(年収106万円)以上」という収入基準が廃止されれば、最低賃金が上がっても勤務時間を減らさず、安定して収入を増やす働き方が可能になるでしょう。
とはいえ、「週20時間以上勤務」という条件は継続するため、年収の壁に関する課題がすべて解消されるわけではありません。
加えて、106万円の壁がなくなったとしても、「103万円の壁」や「130万円の壁」など、依然として注意すべき収入ラインは存在します。
そのため、働き方を検討する際には、これらの制度全体を踏まえて判断することが重要です。
5. 2025年10月の最低賃金の引き上げに備えて自分の給与水準や働き方を見直そう
本記事では、都道府県別の最新の最低賃金額について紹介していきました。
2025年度の最低賃金は、全国平均で1121円に達する見通しで、10月から順次引き上げが行われる予定です。
今回の過去最高の上昇幅を歓迎する声がある一方で、「年収の壁」を意識する人にとっては新たな課題となる可能性があります。
この機会に、自分の給与水準や働き方について改めて見直すことを検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
- 厚生労働省「最低賃金の決め方は?」
- 厚生労働省「Q2 最低賃金は誰がどのように決めているのですか。」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省社会保険適用拡大特設サイト「配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま」
- 厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 答申状況」
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」
和田 直子