ここ数年、60歳を過ぎても働き続けるシニアが目に見えて増えています。

定年延長や再雇用制度の広がり、健康寿命の延伸といった社会的変化がその背景にありますが、「年金だけでは生活費や医療費をまかなうのが難しい」という切実な理由が大きな原動力になっているのも事実です。

こうした状況のなかで、「自分も利用できる公的な支援はないか」と考える人は少なくありません。実際に、高齢期にこそ申請によって活用できる制度は数多く整備されています。

例えば、公的年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」や、医療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」、さらには再就職や短時間勤務を支援する取り組みなど、生活を下支えする仕組みは幅広く存在しています。

さらに、2026年度には年金や医療に関する制度改正も予定されており、今後の生活設計を考えるうえで制度動向の把握は欠かせません。

本記事では、こうした支援制度の概要と今後の改正ポイントについて詳しく解説します。老後のライフプランを考えるうえで、ぜひ参考にしてください。

1. 年金受給者向け「年金生活者支援給付金制度」とは?

「年金生活者支援給付金」は、公的年金を受給している方のうち、所得が一定基準以下の世帯を対象に支給される制度です。

2019年10月の消費税率引き上げにあわせて導入され、物価高や年金額の減少で生活が厳しくなりがちな高齢者を支援することを目的としています。

給付金は公的年金に上乗せされる形で支給されるため、対象者であれば年金の振込と一緒に受け取ることができます。

ただし、年金受給者であれば誰でももらえるわけではなく、所得水準や世帯構成といった条件を満たす必要があります。

対象となる方には毎年9月以降、「年金生活者支援給付金請求書(緑の封筒)」が郵送されるので、必要事項を記入して必ず返送しましょう。

1.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件

「老齢年金生活者支援給付金」は、老齢基礎年金を受給している方のうち、一定の所得基準を満たす世帯に支給される給付金です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は90万6700円以下(※2)

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

なお、障害年金および遺族年金の受給者については別途要件が定められています。

「老齢年金生活者支援給付金」の給付基準額と平均給付月額

2025年度は物価上昇などの影響を受け、給付基準額が前年より2.7%引き上げられました。

「年金生活者支援給付金」の給付基準額と平均給付月額

「年金生活者支援給付金」の給付基準額と平均給付月額

出所:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

  • 老齢年金生活者支援給付金(月額):5450円(+140円)
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級6813円(+175円)・2級5450円(+140円)
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円(+140円)

実際の支給額は、上記の給付基準額をもとに、保険料納付済期間などに応じて計算されます。

「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年3月における平均給付月額は以下のとおりです。

  • 老齢年金生活者支援給付金:4014円
  • 障害年金生活者支援給付金:5555円
  • 遺族年金生活者支援給付金:5057円