5. 老後対策、どうすればいい?検討したい3つの対策
老後生活の蓄えに不安を感じているときは、次のような対策を検討してみましょう。
- 余剰資金の資産運用
- 固定費を中心とした生活費の削減
- 健康なうちは勤労を継続
それぞれの対策について詳しく紹介します。
5.1 余剰資金の資産運用
老後資金の一部については、すぐに使う予定がない「余裕資金」を運用に回すのも有効な選択肢です。
たとえば貯蓄が数百万円あっても、それだけで長い老後を支えるには十分とはいえません。しかし、すぐに全額を生活費として取り崩す必要はないケースが多いでしょう。
生活費や急な医療費など、当面必要となる分を手元に確保したうえで、残りを流動性の高い運用に充てるのもひとつです。
投資信託のような商品なら、必要になった際に比較的短期間で現金化できるため、投資を始めることを過度に不安視する必要はありません。
老後の安心を支えるためにも、手元資金の一部を「働かせる」視点を持ってみましょう。
5.2 固定費を中心とした生活費の削減
赤字を減らすためには、収入を増やすだけでなく、支出を見直すことも有効です。特に老後の資産を守るためには、生活の質を大きく損なわずにコストを抑える工夫が重要です。
ただし、食費や娯楽費といった日々の楽しみに直結する部分を削るのは避けたいところ。そこで注目したいのが、毎月決まって発生する「固定費」です。
たとえば通信費。スマートフォンや自宅インターネットの契約を見直したり、大手キャリアから格安SIMに切り替えたりすることで、利便性をほとんど損なわずに大幅な節約が期待できます。
また、生命保険や医療保険もチェックポイントです。現役時代のままの契約を続けていて、今のライフステージに合わない高額な保険料を払い続けているケースは少なくありません。保障内容を見直すだけで、生活を変えずに支出を減らせることがあります。
まずは生活の質に影響しにくい固定費から、無理のないコスト削減で、安心できる家計を目指しましょう。
5.3 健康で元気なうちは働く
資産運用や支出削減に限界を感じるなら、「働く」という選択肢を検討してみましょう。元気なうちは収入を得ることで、家計にゆとりを持たせることができます。老後に働くことは、決してマイナスなことではありません。
働くことで得られるのはお金だけではありません。社会とのつながりを保ち、日々の生活に張りや楽しみをプラスすることができます。さらに、通勤や仕事中の適度な活動は、心身の健康維持にも役立ちます。実際、働くことを健康づくりの一環として取り入れている方も少なくありません。
6. まとめにかえて
本記事では、シニア世代の貯蓄状況や老後の生活費について見てきました。
ただし、今後も物価が上昇すれば、想定した以上に生活費がかかる可能性があります。日々の暮らしに直結する「物価上昇率」にも目を向けながら、備えていくことが大切です。
現状の普通預金の金利では、残念ながら物価上昇のスピードに追いつくのは難しいのが実情です。そのため、将来に備えるには「物価上昇率を上回る増え方」を意識して資産運用などで資産を育てる必要があります。
資産運用にはリスクもありますが、預貯金だけに頼らず、複数の方法を組み合わせて比較検討することで、老後に安心感を持てる準備ができるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
中本 智恵