5. 【2025年度】年金額は前年度よりも「1.9%」引き上げに
公的年金は、賃金や物価の動向を踏まえ、毎年度見直しが行われます。
2025年度(令和7年度)の年金額は、前年度比で1.9%の引き上げとなりました。
3年連続で年金額は引き上げられていますが、「マクロ経済スライド(※)」の適用により、実際の改定率は物価上昇率を下回っています。
つまり、名目上は増えていても、実質的な受取額は目減りしている状態であり、物価の上昇に年金額が追いついていないことが背景にあります。
※マクロ調整スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
さらに、多くのシニア世帯では、以下の税金や社会保険料が老齢年金から天引きされる形で納付されています。
- 介護保険料
- 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
- 個人住民税および森林環境税
- 所得税および復興特別所得税
年金の見込み額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認することが可能です。
ただし、記載されている金額をそのまま受け取れるわけではなく、実際には税金や社会保険料が差し引かれるため、「額面通りにはもらえない」ことを留意しておきましょう。
6. 老後生活に向けて「ライフスタイルに合った家計収支」を目指しましょう
年金生活がスタートすると、限られた収入の範囲で計画的にやりくりしていく必要があります。
本記事で確認したように天引きされるお金もあり、実際に受け取れる金額は思ったよりも少ないと感じるケースもあるでしょう。
年金だけに頼る老後生活を考えると、ゆとりを持った理想の生活を実現することが難しくなる可能性もあります。
ゆとりのある老後生活を実現するためには、現役のうちにしっかりと資金を準備しておくことが大切です。
まずは今の家計の状態をよくチェックして、ライフスタイルに合った家計収支になるよう調整していくようにしましょう。
参考資料
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
- 日本年金機構「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
川勝 隆登