2. 凍結前に「故人の預貯金を引き出す」2つのリスク

beauty-box/shutterstock.com

口座名義人以外の方が、故人の銀行口座から預貯金を引き出すリスクとして、以下の2点が挙げられます。

  • 不正出金とみなされ親族間のトラブルになるリスク
  • 相続放棄ができなくなるリスク

それぞれのリスクについて詳しく見ていきましょう。

2.1 (1)不正出金とみなされ親族間のトラブルになるリスク

口座名義人が亡くなると、銀行口座内の預貯金は遺産となり、相続人全員の共有財産になります。

相続手続きが完了する前に、相続人の一人が故人の口座から無断で預貯金を引き出すと、「遺産を横取りされた」「勝手に使い込んだ」と他の相続人から疑われ、「不正出金」とみなされる可能性があります。

特に、相続人間が不仲な場合や遺言書が存在しない場合などには、感情的な対立が生じ裁判に発展することも考えられるでしょう。

仮に引き出したお金を故人にかかった医療費や介護費用などの支払いに使っていたとしても、他の相続人から無断で引き出したこと自体が問題となり、「勝手に引き出して自分のものにした」と思われるリスクがあるのです。

なお、生前故人から「必要な費用は自由に使っていい」といった委任があり、書面などで残っていれば他の相続人も納得しやすいですが、ない場合は証明が難しいでしょう。

2.2 (2)相続放棄ができなくなるリスク

故人の銀行口座から勝手に預貯金を引き出すと、相続放棄ができなくなるリスクがあります。

相続放棄とは、相続人が故人(被相続人)の権利や義務を一切相続しないことをいいます。

たとえば、故人に高額な借金があったり、相続したくない特別な理由があったりする場合、亡くなったことを知ったときから3ヵ月以内に、家庭裁判所に相続を放棄する旨を申述することで選択可能です。

これに対し、被相続人の財産や権利だけでなく借金などの義務も一括して相続することを単純承認といいます。

そして、故人の預貯金から勝手に引き出した場合、単純承認をしたものとみなされ、相続したくなくても相続放棄が認められない可能性があるのです。