8. 2025年6月、年金制度改正法が成立。老若男女のお金と暮らしへの影響大!
公的年金は「老後の受給額」だけの話ではなく、働き方やキャリアプラン、人生設計とも深い関わりがあります。
2025年6月13日、国会で年金制度改正法が成立しました。今回の改正の見直しポイントのうち、働く人々の「仕事と暮らし」に深く関わるものを紹介しましょう。
8.1 社会保険の加入対象の拡大①短時間労働者の加入要件の見直し
- 賃金要件の撤廃:3年以内にいわゆる「年収106万円の壁」撤廃へ
- 企業規模要件の撤廃:10年かけて段階的に対象の企業を拡大(※)
※2025年7月時点では「51人以上」
8.2 社会保険の加入対象の拡大②個人事業所の適用対象の拡大
- 2029年10月から個人事業所の社会保険の適用対象(※)が、従業員5人以上の全業種に拡大(2029年10月時点における既存事業所は当面除外)
※2025年7月現在「常時5人以上の者を使用する法定17業種」は加入必須。(法定17業種とは:①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業
8.3 在職老齢年金の見直し
2026年4月から、年金が減額される基準額(※)が「月収51万円(2025年度の金額)→62万円」に緩和。働きながらでも年金を満額もらいやすくなります。
※支給停止調整額:年金を受給しながら働くシニアの「賃金+老齢厚生年金」の合計がこの金額を超えると、年金支給額が調整される。
8.4 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
厚生年金などの保険料や年金額の計算に使う賃金の上限(※1)を「月65万円→75万円」へ段階的に引き上げ(※2)。従来よりも現役時代の賃金に見合った年金を受給できるようになります。
※1 標準報酬月額:厚生年金や健康保険の保険料、年金額を計算するために、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った基準額のこと
※2 2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に引き上げ
9. まとめにかえて
今回は、2025年度の年金額改定、日本の公的年金制度の仕組み、そして年金制度改正法が働く人々に与える影響などについてお話ししました。
年金額は毎年見直され、実際に受け取る金額は税金や社会保険料が差し引かれるため、手取り額を把握することが大切です。
また、国民年金と厚生年金の2階建て構造や、それぞれの加入状況が受給額に個人差を生む点も確認しました。
最近の年金制度改正は、社会保険の適用拡大や在職老齢年金の見直しといった、現役世代の働き方や老後の生活に直結する内容です。これらの変更は、将来の年金受給にも影響を与える可能性があります。
公的年金は老後の生活基盤となりますが、それだけで全ての支出をカバーできる世帯は決して多数派ではないでしょう。
この記事が、ご自身のライフプランと照らし合わせ、どれくらいの備えが必要か、いつまで働くかなどを具体的に考えるきっかけになればと思います。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「厚生年金の保険料」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
マネー編集部年金班