最近は一部の報道で「国の障害年金を申請しても、不支給となった人が2024年度に急増した」ということもあり、障害者支援制度への関心が高まっています。その中でも、障がいのある方が様々な支援を受けられるようになる「障害者手帳」ですが、「どのような障がいのある人が持つものなのか?」「手帳を持つと何に役立つか?」など、その種類や役割についてあまり知られていないこともあります。今回は、3種類ある障害者手帳の概要と、特に知的障害のある方を対象とした療育手帳の所持者の現状、そして自治体によって申請方法などが異なる点についても詳しく解説していきます。
1. 障害者手帳は3種類【身体・療育・精神】それぞれの目的と対象の違い
障害者手帳とは、一般的に「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類のことをいいます。制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なりますが、どの手帳を持っていても「障害者総合支援法」の対象となり、さまざまな支援を受けることができます。また、自治体や民間企業などが独自に提供しているサービスが利用できる場合もあります。
1.1 身体障害者手帳
厚生労働省によると、令和5年度の身体障害者手帳の所持者数は478万3069人。視覚や聴覚、手足などの身体機能に一定以上の障がいがある人に交付され、指定医師の診断書などが必要です。原則更新は不要ですが、状態変化時には再認定を受けることがあります。この手帳は「身体障害者福祉法」に基づき、都道府県・指定都市・中核市が交付業務を行っています。
1.2 療育手帳
令和5年度の療育手帳の所持者数は128万1469人。児童相談所や知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に交付され、この手帳を持つことで様々な障害福祉サービスや自治体・民間の支援が受けられます。ただし、この制度は全国共通ではなく、自治体ごとに運用方法や判定基準が異なります。
1.3 精神障害者保健福祉手帳
令和5年度の精神障害者保健福祉手帳の所持者数は144万8917人。精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害があると認められた人に交付され、手帳を持っていることで社会参加の促進などのための様々な支援を受けられます。等級は1級から3級まであり、精神疾患の状態と日常生活や社会生活における能力障害の状態の両面を総合的に判断して決定されます。
今回は「療育手帳」の所持者について解説していきます。
2. 【療育手帳】所持者は「令和4年度約114万人から令和5年度約128万人に増加」
令和5年度の療育手帳所持者数に関する最新結果(128万1469人)も出ていますが、今回は厚生労働省が公表した「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」に注目し、療育手帳所持者の推移を見ていきましょう。この調査は2016年以来6年ぶりの実施であるため、2022年と2016年の比較で所持者数の傾向を解説します。
2022年の厚生労働省の調査によると、療育手帳の所持者総数は約114万人で、これは2016年の前回調査と比較して約18%増加しています。この増加は、知的障害の早期診断や支援制度の周知が進み、より多くの人が必要な手帳を取得できるようになったことを示唆しています。
障がいの程度別に見ると、全体の約半数(51.4%、約58万7000人)が軽度・中度の知的障害を含む「その他」の区分に該当します。一方、「重度」の知的障害を持つ方は約42万人で、全体の36.8%を占めています。
この分布は、知的障害の多様な程度を反映しているとともに、福祉や教育の現場で個別の支援ニーズが広がっている現状を示唆しています。療育手帳の所持者数が継続して増加していることは、知的障害のある方への社会全体の理解が深まり、必要な支援がより届きやすい環境が整備されてきていることの表れと言えるでしょう。
3. 【療育手帳】年代別・所持者の傾向「いちばん多い年代はどこ?」
「療育手帳の所持者はどの年代が多いのか?」
こちらも「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」でみていきましょう。
2022年の療育手帳所持者約114万人を年齢階級別に見ると、最も多いのは20歳から29歳の「20歳代の年代」。この年代が約22万9000人で全体の20.1%を占めています。また、18歳以上の所持者は全体の約7割に上り、これは就労や自立の時期においても、就労支援や福祉サービスを受けるために手帳を継続して所持している人が多いことを示唆しています。
一方で、18歳未満の子どもたちが全体の約25%を占めていることも特徴です。具体的には、10歳から17歳が約15万8000人(13.9%)、0歳から9歳が約12万4000人(10.9%)となっています。これらの子どもたちの所持者数は、2016年の前回調査と比較していずれも増加しており、知的障害を伴う子どもたちへの早期の気づきと、適切な支援へのつながりが広がっている現状を反映していると考えられます。
この傾向は、家庭や学校、地域社会における知的障害への理解が進み、支援体制が充実してきたことで、子どもたちが安心して成長できる環境が整いつつあることを示唆しています。
4. 【療育手帳】申請の注意点と流れ「自治体により異なります」
療育手帳制度は、全国共通の法律に基づくものではなく、各自治体が独自の基準や運用を定めています。そのため、申請窓口、判定機関、障害の等級区分なども地域によって異なります。
4.1 【横浜市の場合】「療育手帳」カードタイプも選べる
例えば横浜市では、療育手帳の申請を区の福祉保健センターで受け付けています。判定は、18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は障害者更生相談所で行われます。申請から手帳交付までにはおおむね2ヶ月から2ヶ月半ほどの期間を要し、必要書類の提出や本人確認、写真などが必要となります。また、横浜市では療育手帳の様式を紙かカードかで選択できる特徴もあります。
このように、療育手帳の申請を検討する際は、自治体ごとに運用方法に細かな違いがあるため、事前に必ずお住まいの自治体の障害福祉窓口などで詳細を確認することが重要です。これにより、スムーズな申請と必要な支援への接続が可能になります。
5. まとめにかえて
今回は、最近報道されている障害年金の問題に触れつつ、それとは異なる障害者手帳の種類や療育手帳の現状について解説しました。
障害者手帳には「身体」「精神」「療育」の3種類があり、その中でも療育手帳は知的障害と判定された方へ交付される手帳となっています。所持者数は年々増加傾向にあり、20~29歳の年代が最も多く、全体の20%を占めています。その他にも、10~17歳、30~39歳の割合も高く、知的障害への認知が高まってきたとも言えるでしょう。
また、療育手帳の申請は、自治体によって基準・運用が異なることから、詳しい内容についてはお住まいの自治体に確認してみることをおすすめします。
最後に、この記事を通して正しい理解が広がり、ご自身や身近な方が必要な支援につながることで、誰もが安心して暮らせる社会になることを願います。
参考資料
長井 祐人
