本格的な夏が到来し、エアコンの使用が増える時期になりました。電気代をはじめとする終わりの見えない物価高は、年金で生活するシニア世帯にとって大きな悩みではないでしょうか。

総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の無職高齢夫婦の世帯では、1カ月の食費に約7万9000円、光熱・水道費に約2万4000円を支出しています。

物価上昇が続くなか、年金収入を主な支えとする世帯にとって、この負担は決して軽いものではありません。
手元の資金に少しでもゆとりを持たせるためには、公的な支援制度をしっかりと活用することが大切です。

しかし、公的支援のなかには、自ら請求手続きをしないと受け取れないものも少なくありません。

そこで本記事では、所得が一定基準以下の年金受給者を支える「年金生活者支援給付金」のなかでも、65歳以上の方が対象となる「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当て、2026年度の増額内容や対象者、手続きについて詳しく解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  年金に上乗せされる「老齢年金生活者支援給付金」が2026年度は3.2%増額され、基準額が月額5620円に。
  •  支給対象は65歳以上で老齢基礎年金を受給し、世帯全員が住民税非課税などの所得要件を満たす人。
  •  支給には原則手続きが必要。日本年金機構から届く封筒やはがきを見落とさず、必ず返送すること。

2. 【2026年度は3.2%増額】年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」とは?

要件を満たせば「年金とは別」に受け取れる公的支援1/10

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

公的年金などの収入や所得額が一定基準を下回る方を対象に、年金に上乗せして支給されるのが「年金生活者支援給付金」です。

「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、要件を満たせば2カ月に一度、年金とは別に給付金を受け取れます。

2.1 【対象者の条件】65歳以上・住民税非課税世帯は要チェック

老齢年金生活者支援給付金を受給するための主な要件は、以下の3つです。

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件2/10

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

これらの条件をすべて満たしている場合に、老齢年金生活者支援給付金を受け取ることができます。

2.2 2026年度の給付基準額は「月額5620円」に増額(3.2%アップ)

年金生活者支援給付金の給付額3/10

年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度の給付額は、前年の物価変動率を反映し3.2%増額されました。

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は「月額5620円」となり、この基準額をベースに、個人の保険料納付済期間や免除期間に応じて実際の支給額が算出されます。

3. 65歳以上シニア「世帯の収入実態」をデータで見る

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の 総所得に占める割合別世帯数の構成割合4/10

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の 総所得に占める割合別世帯数の構成割合

出所: 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」によれば、公的年金・恩給を受給している世帯のうち、収入のすべてが公的年金・恩給という世帯は41.3%にのぼります。

3.1 公的年金への依存度は、年齢が上がるにつれて高まる

さらに、世帯の老後の資金源を見てみると、年齢が上がるにつれて公的年金への依存度が顕著に高まることが分かります。

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出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、二人以上世帯において資金源として「公的年金」を挙げる割合は、60歳代では75.0%ですが、70歳代になると87.3%へと上昇します。

その一方で、「就業による収入」は60歳代の42.5%から70歳代では18.7%へと大きく減少しています。

単身世帯においても傾向は同じで、70歳代の88.1%が公的年金を主な資金源として頼っている状況です。

このように、年齢を重ねるごとに労働収入が減り、年金収入への依存度が高まるため、終わりの見えない物価高は家計に直接的かつ深刻なインパクトを与えます。

だからこそ、手元資金を守るための給付金制度の活用が不可欠なのです。

4. 年金生活者支援給付金の手続き方法を3つのケース別に解説!請求書が届いたら要確認

年金生活者支援給付金の手続き方法6/10

年金生活者支援給付金

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金」

年金生活者支援給付金の支給対象になると思われる方には、日本年金機構から請求手続きに関する書類が郵送されます。

年金の受給状況によって書類の形式や送付されるタイミングが異なるため、3つのケースに分けて手続きの流れを確認しましょう。

4.1 ケース1:これから老齢年金の受給を開始する方(緑の封筒)

65歳になり、これから老齢基礎年金の受給を始める方には、65歳になる3カ月前に「年金請求書(事前送付用)」が送られてきます。その中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。

必要事項を記入のうえ、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書と一緒に年金事務所へ提出してください。

4.2 ケース2:すでに年金を受給中の方(うす緑の封筒)

年金生活者支援給付金請求書の封筒8/10

年金生活者支援給付金請求書の封筒

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」

すでに老齢基礎年金を受給中で、新たに給付金の対象者となった方には、2025年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次発送されます。

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)9/10

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

出所:日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」

はがきに必要事項を記入し、同封されている目隠しシールを貼り付けた後、切手を貼ってポストへ投函します。

※支給要件に該当するかどうか確認できない方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付される場合があります。

4.3 ケース3:老齢基礎年金を繰上げ受給している方(うすだいだい色の封筒)

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用10/10

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出所:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

老齢基礎年金を繰上げ受給している方で、給付金の対象者になると見込まれる場合、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

手続きはケース2と同様で、はがきに記入してシールを貼り、切手を貼って投函するという流れです。

※支給要件に該当するかどうか確認できない方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付される場合があります。

一度申請が認定されると、支給要件を満たし続ける限り、翌年度以降の手続きは原則として不要です。もし所得の増加などにより要件から外れた場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、支給が停止されます。

5. 筆者からのコメント

熊谷 良子

年金は老後の命綱です。データでもお伝えした通り、シニア世帯の4割以上が年金収入のみで暮らしており、物価高の影響をまともに受けています。

給付金の受給には所得要件がありますが、ここで覚えておきたいのが、遺族年金や障害年金は「非課税収入」となり、給付金の所得判定には含まれないというルールです。

日本年金機構からの案内が届く時期や詳しい注意点については後述しますが、もしご自身やご家族の元に給付金の封筒が届いた際は、そのまま放置せず、まずは中身を開けてしっかりと要件を確認してみてくださいね。

6. 所得基準を少し超える人は「補足的老齢年金生活者支援給付金」の対象に

給付金の支給要件として、「前年の年金収入とその他の所得の合計額が80万9000円以下(昭和31年4月2日以降生まれの場合)」という基準があります。これを見ると、「少しでも超えてしまったら、1円ももらえないの?」と思うかもしれません。

実は、所得が基準額をわずかに超えたことで給付金が全く受け取れなくなり、結果的に基準額以下の人よりも手取り収入が少なくなってしまう「所得の逆転現象」を防ぐための仕組みが用意されています。

それが「補足的老齢年金生活者支援給付金」です。

昭和31年4月2日以降生まれの方であれば、所得合計が80万9000円を超え、90万9000円以下の場合に、この補足的な給付金が支給されます。給付額は所得に応じて段階的に調整され、上限に近づくほど少なくなります。

該当する方には同様に案内が届くため、書類が届いたら「自分は所得オーバーのはず」と決めつけず、必ず内容を確認して手続きを進めましょう。

7. 例年9月から届く案内と「さかのぼり支給」の厳しめルール

すでに年金を受給中で、前年の所得が下がったことなどにより新たに給付金の対象となる方には、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」が郵送されます。

案内は例年9月頃から順次発送される予定ですが、今年度の詳細なスケジュールはまだ未定となっています。対象になるかもという方は、秋口以降の郵便物に特に注意を払っておきましょう。

ここで覚えておきたいのが「申請のタイミング」です。

公的な手当のなかには、申請が遅れても後からまとめて過去の分を受け取れるものもありますが、この給付金については原則として「請求した月の翌月分から」しか支給されません。

つまり、書類が届いていたのに机の引き出しにしまったまま数カ月放置してしまうと、その遅れた期間分の給付金は消滅してしまい、さかのぼって受け取ることはできないのです。

もし「そういえば、親の家にそれらしい色の封筒があった気がする」という場合や、書類を紛失してしまったという場合は、早急に給付金専用ダイヤルや近くの年金事務所へ問い合わせて再発行の手続きをしてください。

月額5620円でも、1年になれば約6万7000円。後回しにせず、気づいた時点で即座に行動することが、大切な資金を守る防衛策になります。

8. まとめ

2026年度から増額された「老齢年金生活者支援給付金」は、物価高に直面するシニア世代の生活を底上げしてくれる重要な公的支援です。

各種データが示す通り、年金収入だけで生活を維持するには多くの工夫が求められる厳しい時代となっています。

だからこそ、利用できる制度を正確に把握し、漏れなく活用することが家計防衛の第一歩です。日本年金機構から対象と思われる方に郵送される緑色やうす緑色の封筒は大切な書類です。

秋頃に発送される案内にはとくに注意しておきましょう。

制度の仕組みは複雑に感じるかもしれませんが、手続き自体ははがきに記入して投函するだけのシンプルなもの。

ご自身の状況はもちろん、離れて暮らす親御さんの郵便物などにも気を配り、確実にもらえるお金を受け取るための準備を進めていきましょう。

参考資料