連日の猛暑に加え、夏以降も飲食料品の値上げラッシュが本格化するなど、日々の家計への負担が気になるこの頃。

退職後の暮らしを考えるとき、「自分の年金は一体いくらもらえるのか?」という疑問は、多くの方にとって最大の関心事です。

厚生労働省のデータによれば、現在の国民年金の平均受給月額は約6万円、厚生年金は約15万円となっています。

この記事では、「平均年収600万円」で「40年間」会社員として勤務したケースをモデルに、将来受け取れる年金の目安額を試算します。

さらに、最新の家計調査データ(2025年)を基に、年金から税金等が天引きされた後の「手取り額」や、リタイア後のリアルな生活収支の実態についても解説。

老後の生活設計や早めの備えを考えるための第一歩として、ぜひお役立てください。

1. この記事の3つのポイント

  •  平均年収600万円で40年間勤務した場合、将来の年金受給額は月額約18万円が目安です。
  •  年金は額面通りではなく、税金や社会保険料が天引きされるため、手取り額は15万〜16万円前後になる可能性があります。
  •  最新の家計調査では、年金収入だけでは生活費が不足する世帯も。老後資金の準備が重要です。

2. 日本の平均年収は460万円。年収600万円はどの層?

国税庁が公表した「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、2023年に1年間を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。

この結果から、日本の一般的な年収は400万円台が中心であることがわかります。では、年代別に見ると平均年収はどのように推移しているのでしょうか。

給与所得者の平均年収1/4

給与所得者の平均年収

出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

年齢階級別のデータを見ると、収入は20歳代から30歳代にかけて大きく増加し、55歳から59歳でピークを迎えることがわかります。その後は緩やかに減少し、60歳代以降は明確に下がる傾向にあります。

また、すべての年代で男女間に収入差が見られ、特に40歳代や50歳代では、男女の平均年収に200万円以上の開きがある層も存在します。

全体の平均である460万円という数字は、こうした年代や性別の差をすべて含んだ結果といえます。

3. 【試算】年収600万円で40年勤務した場合の年金額

それでは、生涯の平均年収が600万円で、民間企業に40年間勤務したと仮定した場合、将来受け取れる年金額はいくらになるのでしょうか。

このケースでは、老後に国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)の両方を受け取ることになります。

まず、1階部分にあたる国民年金は、保険料を40年間(480カ月)すべて納付した場合、満額の「年額84万7296円」が支給されます(2026年度の金額)。

次に、2階部分の厚生年金を計算します。計算を簡略化するため、2003年4月以降の加入期間として計算すると、以下のようになります。

【計算式】平均標準報酬額(50万円) × 5.481/1000 × 加入月数(480カ月) = 131万5440円

国民年金と厚生年金を合計すると、年金額は「216万2736円」となり、月額に換算すると「約18万円」です。これが、会社員1人分の年金月額の目安となります。

4. 【注意】年金の手取りはいくら?税金・社会保険料の天引き

ただし、この月額約18万円がそのまま口座に支給されるわけではありません。現役時代の給与と同様に、年金からも税金や社会保険料が天引きされるため、手取り額は額面より少なくなります。

参考として、総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を見てみましょう。65歳以上の単身無職世帯の家計収支は以下のようになっています。

65歳以上の単身無職世帯における家計収支2/4

65歳以上の単身無職世帯における家計収支

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

データによると、実収入約13.1万円に対し、税金・社会保険料として約1.3万円が差し引かれています。

その結果、手取りとなる可処分所得は約11.8万円ですが、生活費である消費支出が約14.8万円かかっており、毎月約3万円の赤字が出ているのが実情です。

先ほど試算した「月額約18万円(年額約216万円)」の年金も、全額がそのまま口座に振り込まれるわけではありません。

現役時代と同様に、年金からも所得税や住民税といった税金のほか、国民健康保険料(75歳以降は後期高齢者医療保険料)や介護保険料などの社会保険料が容赦なく天引きされます。

お住まいの自治体や扶養家族の有無によって金額は異なりますが、これら税金と社会保険料の負担は、年金額の10〜15%程度を占めるのが一般的です。

そのため、額面が月額約18万円であっても、実際の手取り額は「15万〜16万円前後」まで目減りする可能性が高いでしょう。

一見すると、この手取り額で平均的な生活費(約14.8万円)をギリギリまかなえそうに見えます。

しかし、この生活費はあくまで「持ち家(家賃負担がない)」を前提とした最低限の金額です。

賃貸住まいで家賃がかかる場合や、趣味や旅行を楽しむ「ゆとりある老後」を望む場合、手取り15万〜16万円では不足し、毎月赤字に転落する確率は非常に高いと言えます。

5. 筆者からのコメント

熊谷 良子

今回の試算結果を見て、「思ったより少ないかも」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。

私自身、50歳を過ぎて「ねんきん定期便」に記載されたリアルな見込額を見たとき、改めて「年金の記録は、自分の生き方や働き方の履歴そのものだな」と痛感しました。

実は、50歳未満の方に届く「ねんきん定期便」には「これまでの加入実績に応じた年金額」が、50歳以上の方には「現在の加入条件が60歳まで続くと仮定した年金見込額」が記載されています。

後者の方がより将来の受給額に近いリアルな数字なので、50歳を過ぎたらぜひ注目してみてくださいね。

6. 年金を増やすには?今から検討したい3つの選択肢

公的年金だけでは心もとないと感じる場合、受給額を増やすための選択肢がいくつかあります。

ここでは代表的な3つの方法をご紹介します。

6.1 繰下げ受給を利用する

繰下げ受給の増額イメージ3/4

繰下げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとに筆者作成

年金の受給開始は原則65歳ですが、66歳から75歳までの間に遅らせる「繰下げ受給」を選択できます。

1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%増額され、75歳まで繰下げると最大で84%も増やすことが可能です。

長生きするほど有利になりますが、受給開始が遅れる点や、税金・社会保険料の負担が増える可能性も考慮する必要があります。

6.2 できるだけ長く働く

厚生年金は70歳まで加入できます(※)。

60歳以降も働き続けることで厚生年金の加入期間が延び、将来受け取る年金額を増やすことができます。

ただし、給与と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止される「在職老齢年金」の仕組みには注意が必要です。

※例外的に、老齢年金の加入期間が不足している場合「高齢任意加入」の制度があります。

6.3 私的年金(iDeCo・NISA)を活用する

公的年金を補う手段として、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった私的年金の活用も有効です。

iDeCoは掛金が全額所得控除の対象になるなど、税制上のメリットが大きいのが特徴です。

NISAも非課税で投資ができるため、計画的な資産形成に役立ちます。どちらも早く始めるほど、長期的な運用の効果が期待できます。

7. 夫婦2人の年金はいくら?知っておきたい「加給年金」と「振替加算」

今回の記事では単身者の年金をモデルにしましたが、夫婦世帯の場合はさらに知っておきたい制度があります。

それが「加給年金」と「振替加算」です。

7.1 年金の家族手当「加給年金」

加給年金とは、厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になった時点で、その人に扶養されている65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいる場合に、年金に上乗せして支給されるものです。

「年金の家族手当」とも呼ばれ、配偶者の場合、特別加算(※)を含めると年間で最大42万3700円が加算されます(2026年度の金額)。

※特別加算額は受給権者の生年月日により異なります。

7.2 加給年金終了後に支給される「振替加算」

加給年金の対象だった配偶者が65歳になると、自身の老齢基礎年金を受け取り始めるため、加給年金は支給停止となります。

その代わりに、配偶者の老齢基礎年金に一定額が上乗せされるのが「振替加算」です。

これは、かつて国民年金への加入が任意だった世代の年金額を補うための制度で、生年月日によって加算額が異なります。

これらの制度を知っているかどうかで、世帯全体の生涯受給額が大きく変わることもあります。ご自身の家庭が対象になるか、一度確認してみることをおすすめします。

8. まとめ:自分の年金見込額を把握し、早めの対策を

今回は「平均年収600万円で40年勤務」というモデルケースで年金額を試算しましたが、実際の受給額は一人ひとりの働き方や収入の履歴によって大きく異なります。

また、最新の家計調査が示すように、年金の手取り額だけでは毎月の生活費をまかなうのが難しく、貯蓄を取り崩しながら生活するケースも少なくありません。

豊かな老後を送るためには、まずご自身のリアルな年金見込額を把握することが不可欠です。

「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」を活用して、現状を確認してみてはいかがでしょうか。

その上で、不足すると考えられる金額をどのように補うか(長く働く、NISAやiDeCoで計画的に資産形成をするなど)、今のうちから具体的な計画を立てておくことが大切です。

参考資料