6.6 年金の引上げ率は物価上昇率に及ばない
ここで、年金の引上げ率の決め方について簡単に紹介します。
まず、年金の引上げ率は、賃金変動率と物価変動率の「小さい方」を基準としています。この時点で年金の引上げ率が物価上昇率を上回ることはありません。
また、令和7年度の改定時には、物価上昇率よりも過去3年度の賃金変動率の平均の方が小さかったため、基準は賃金変動率の+2.3%におかれました。
さらに、年金制度を維持するために「マクロ経済スライドによる調整」が導入されています。これは、少子化に伴い年金の負担者にあたる被保険者数が減少し、一方で、長寿化に伴い高齢者の年金受給期間が延びることへ対処するために、年金の引上げ率を抑える仕組みです。
これらの要因より物価上昇率+2.7%に対して、年金の引上げ率は+1.9%に留まる形となりました。
7. まとめにかえて
今回は、現代のシニア世代がどれくらい年金を受け取っているのかを確認しながら、60歳代・二人以上世帯の「貯蓄3000万円」の割合や、シニア世帯の1カ月あたりの生活費について解説してきました。
物価が上がり続ける中で、年金だけでは将来に不安を感じるという方も少なくないでしょう。そうした中で、老後の暮らしを支える手段のひとつとして「資産運用」を取り入れることも一つの選択肢になります。
もちろん、資産運用にはリスクがあるため、無理のない範囲で、自分の性格や生活スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。焦らず、長い目で見ながら、少しずつ老後に向けた準備を進めていきましょう。
参考資料
- J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 金融庁「つみたてシミュレーター」
- 総務省統計局「高齢者の就業(労働力調査、OECD.Stat)」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
マネー編集部貯蓄班