2. 在職老齢年金とは
「在職老齢年金」とは年金を受給しながら厚生年金保険の被保険者として会社で働いている場合に、年金と給与(働いた報酬額)の合計に応じて年金の一部を支給停止するなどして「年金支給額を調整する仕組み」のことです。
要するに、年金を受給している高齢者の給与が多くなると、年金が減額されることになります。なお、調整される年金の対象は老齢厚生年金です。老齢基礎年金は減額されることなく受け取ることができます。
2025年度は、年金と給与の合計が51万円以上になると、在職老齢年金で支給調整の対象になります。
この在職老齢年金の基準額は年々増加しており、厚生労働省は在職老齢年金の基準額を2026年4月には62万円に引き上げるなど大幅な引き上げを検討しているようです。
これらの基準額引き上げは、シニアが安心して長く働けるよう支援し、日本の社会を支える労働力として、その活躍を後押しするものです。
2.1 在職老齢年金の支給調整ルールを確認
では3つのケースにそって、65歳以上の在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金月額について計算してみましょう。
計算は、年金の基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額)と、毎月の給与(総報酬月額相当額)を用いて行います。
在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金の支給月額の計算式はこちらです。
=基本月額-(年金の支給月額+毎月の給与-51万円)÷2
ケース1.給与20万円・年金20万円
20万円-(20万円+20万円-51万円)÷2
→基準額の51万円を超えないので、年金は支給停止されません。
(年金は全額受給できる)
ケース2.給与40万円・年金20万円
20万円-(20万円+40万円-51万円)÷2=15万5000円
→年金は4万5000円が支給停止されます。
ケース3.給与65万円・年金10万円
10万円-(10万円+65万円-51万円)÷2
→年金の支給月額10万円より支給停止額12万円のほうが高くなるので、年金は全額停止されます。
なお、65歳未満の方については、令和4年3月以前の年金に関して支給停止の仕組みが現在と異なるため、別の計算方法が適用されます。
また、平成19年4月以降に70歳を迎えた方が、70歳を超えても厚生年金の適用事業所で働き続けている場合、厚生年金の被保険者には該当しませんが、「在職老齢年金」として年金の支給が停止されることがあります。
2.2 年金の上乗せ部分も計算に含まれる?
在職老齢年金の支給停止対象となる部分は主に、老齢厚生年金(報酬比例部分)の本体部分です。
なので、
加給年金(家族に対する上乗せ)や経過的加算(老齢基礎年金の代替的な役割)、繰下げ加算額(年金受給を遅らせたことによる上乗せ)などの本体部分の上乗せ部分は計算に含まれません。
しかし、老齢厚生年金の月額より、支給停止額が高くなって年金が全額停止されるときは、年金の基本月額と加給年金の両方が全額支給停止になるので注意が必要です。