2. 故人の資産は相続人全員の共有財産
銀行が、口座名義人の死亡に対し、速やかな届け出を呼びかけ、届け出後に口座の入出金を停止するのには理由があります。それは相続が発生したら、故人の資産は相続人全員の共有財産になるからです。
このことを知らずに、相続人、あるいは相続人以外の親戚などが、故人の口座から勝手にお金を引き出すと、のちに相続人同士のトラブルに発展する可能性があります。
死亡届が銀行に出された後に、口座を使えなくする「凍結」がおこなわれるのは、無用のトラブルを避けるためでもあります。
3. 銀行に死亡届を提出する前、ATMでお金を引き出すのはNG?
一方で、銀行に届け出をしなければ、口座は凍結されないため、死亡の知らせを伝える前に現金を引き出したくなるのが、残された家族の本音かもしれません。
家族が亡くなった後はお葬式など、お金の必要な場面が続くので、少しでも故人の財産から当面の費用を工面したいところです。とくに故人の口座管理をしていた方であれば、現金を引き出すことは容易です。
ただし、前述したとおり、亡くなった方の口座からの出金は、安易に行わないことをおすすめします。故人の口座機能を、銀行が停止するのには理由があるからです。
3.1 理由その1:相続人の間でトラブルが起こる可能性がある
故人が保有していた財産は相続人の共有財産になります。そのため、複数の相続人がいれば、たとえば、現金を誰がいくら相続するか、土地や証券は誰が相続するかなど、相続財産を分割するための話し合いが必要になります。
これは各人の相続分を決定し、納税をおこなうために必要なプロセスでもあります。
このプロセスを経ず、一人の判断だけでお金を引き出すことは、各相続人の権利を侵害してしまう可能性もあります。引き出されたお金が多額であったり、お金の使用目的がはっきりしない場合であれば、より深刻なトラブルを招くこともあるので注意が必要です。
3.2 理由その2:相続放棄ができなくなる
相続財産には、故人が保有していたすべての資産や権利が含まれるため、負債も含まれます。
したがって、プラスの財産よりマイナスの財産が多いと、負債だけを相続してしまうため、このような場合は「相続放棄」や「限定承認」をおこない、負債を相続をしない権利が認められています。
気をつけたいのは、銀行に連絡せずに預金を引き出してしまうと、財産を相続をする意思を示したとみなされる可能性があることです。※すべての財産を相続することを「単純承認」と言います。
単純承認とみなされると、故人に負債があったことが後にわかっても、相続放棄や限定承認ができなくなる可能性もあります。遺産分割の協議を終えて、手続きが完了するまで預金は引き出さない方が賢明です。