物価上昇が続くなか、毎月の給与明細を見て「税金や社会保険料が高い」とため息をついている方も多いのではないでしょうか。特に近年は社会保険料の負担が増しており、手取りの少なさを実感しやすい状況にあります。一方で、国税庁のデータを見ると、日本の「所得税」に関しては、実は一部の高所得者がその大半を負担しているという実態が見えてきます。
今回は、国税庁の「申告所得税標本調査」の結果を用いながら、所得階級別の税負担の構造について解説します。後半では、少しでも税負担を軽くし、手取りを守るための「控除制度」についても紹介します。なお、今回紹介する国税庁の「申告所得税標本調査」は「確定申告を行った人」が対象です。
1. 【億り人】申告所得税「7兆円の約3割」を負担!所得1億円超の富裕層が支える実態
国税庁の調査によると、2023年における申告納税者数は668万人で、総額7兆1932億円もの所得税が納められています。この内訳を見ると、申告納税者の人数のうち85.6%は「所得1000万円以下」の人で占められています。しかし、実際に納められた税金の額(税額)の構成割合を見ると、その比率は逆転します。
申告納税者のうち「所得1000万円超」の人は人数にしてわずか14.4%ですが、その層が納める税金は全体の税額の85.4%を占める結果となっています。特に、いわゆる「億り人」クラスである所得1億円超の人は全体の0.4%とごく少ない割合であるものの、その納税額は全体の28.1%に達しています。
2. 【億り人】高所得者へ負担は偏る?「累進課税制度」の仕組み
このように高所得者層の負担割合が大きくなる背景には、日本の所得税で採用されている「累進課税制度」があります。
累進課税制度とは、所得が多くなるほど税率が高くなる仕組みのことです。所得税の最高税率は45%に設定されており、これに住民税(一律約10%)をあわせると、最高で55%もの税率が適用されます。
つまり、いわゆる「億り人」のような超富裕層は、稼いだ金額の半分以上を税金として納めることになるのです。結果として、こうした層の納税額が全体の多くを占める構造となっています。
3. 元銀行員が語る、税負担を軽減する「3つの控除」活用術
こうした税負担を軽減するために活用したいのが、控除の制度です。日本の税制度では、収入や家族構成など個々人の事情を考慮して公平な税負担となるように、一定額を所得や税額から控除する制度があります。
ここからは、誰でも活用しやすい控除制度を3つ紹介しましょう。
3.1 活用したい控除制度(1)生命保険料控除
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生命保険料控除とは、民間の生命保険や介護保険、個人年金保険などの保険料を支払ったときに、その一部を所得から控除する制度です。
控除金額は支払った保険料によって異なっており、たとえば年間8万円超の保険料を支払ったときは4万円の所得控除を受けることができます。この控除は生命保険と介護保険、個人年金保険のそれぞれで受けられますので、最高12万円を所得から控除できる仕組みです。
こうした保険は将来への備えにもなりますので、万が一の事態に備えながら税負担を抑えられるのは嬉しいポイントといえます。
なお、会社員や公務員の方は年末調整の際に書類を提出するだけで控除を受けられますので、確定申告が不要であるのも大きなメリットです。
3.2 活用したい控除制度(2)小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済掛金控除とは、一定の共済に加入して掛金を支払った場合に適用される控除制度です。代表的な例がiDeCoで、加入者は掛金の全額を所得から控除することができます。
iDeCoは、勤務先や職業などに応じて掛金の上限が定められていることが特徴です。特に税制メリットが大きいのが自営業者などの第1号被保険者で、年額81万6000円まで拠出することができます。
これが全額所得から控除されますので、青色申告の最高65万円よりも大きな控除を受けられるメリットがあります。
もちろん会社員や公務員の方も年額24万円〜27万6000円の控除が受けられますので、将来の年金に備えながら税負担を抑えることができます。
3.3 活用したい控除制度(3)住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りてマイホームを購入・リフォームしたときに、そのローンの年末残高の0.7%を税額から控除する制度です。たとえば、住宅ローン残高が3000万円の場合、21万円を税額から控除することができます。
適用には床面積や居住状況など一定の要件を満たす必要がありますが、家計の大きな負担でもある住宅ローンによって控除を受けられるのは大きなメリットです。
筆者は元銀行員としてさまざまなお客さまに出会いましたが、医師や経営者の方など十分キャッシュで住宅を購入できるような方でも、税負担を抑えるためにあえて住宅ローンを利用する方も多くいらっしゃいました。
なお、会社員や公務員の方は、住宅ローン控除の適用を受ける初年度に確定申告を行う必要がある点に注意しましょう。
4. まとめにかえて
私たちの生活は税金と深い関わりがあるにもかかわらず、「自分がどれくらいの税金を納めているか分からない」ということも珍しくありません。まずは、税制の仕組みを知り、活用できる制度はないか考えてみることが大切です。
控除制度の中には誰でも利用しやすいものもありますので、ぜひ活用を検討してみましょう。
参考資料
椿 慧理