今年度の基礎年金額は、満額で月額6万9308円です。国民年金保険料を適切に納めていれば満額を受け取れますが、なかには経済状況が苦しく、なかなか保険料を納められない人もいるでしょう。

私たちは生活に困窮しているときに、生活保護を申請できます。近年、生活保護の申請件数は増加傾向にあるようです。とくに、保護率については地域で差が見られます。生活保護の申請が増えている理由はなんでしょうか。

この記事では、生活保護の申請件数や、都道府県別の保護率について解説します。

1. 生活保護の仕組み

生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活を営み、自立の助長を図るために、困窮の程度に応じて必要な保護が行われる制度です。保護の申請は国民の権利であり、誰でも相談や利用ができます。

生活保護で支給される金額は「最低生活費」から収入を除いた金額です。最低生活費は、世帯構成や住んでいる場所によって異なります。東京都の場合は約13万円といわれています。

生活保護のしくみ1/5

生活保護のしくみ

出所:厚生労働省「生活保護制度」

生活保護で受けられる扶助は、以下のとおりです。

  • 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
  • 住宅扶助:アパート等の家賃
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
  • 医療扶助:医療サービスの費用
  • 介護扶助:介護サービスの費用
  • 出産扶助:出産費用
  • 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
  • 葬祭扶助:葬祭費用

日常生活に加え、住居費や教育費、医療費についても扶助が受けられます。さまざまな支出に対して扶助が出るため、生活の立て直しが図りやすくなるでしょう。

保護を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

生活保護の受給要件2/5

生活保護の受給要件

出所:厚生労働省「生活保護制度」をもとに筆者作成

  • 資産の活用:預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却して生活費に充てること。
  • 能力の活用:働ける場合は、能力に応じて労働すること。
  • あらゆるものの活用:年金や手当など他の制度で給付を受けられる際は、それらを優先して活用すること。
  • 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる際は、援助を受けること。
  • ※それでもなお収入が最低生活費に満たない場合は、保護を適用する。

資産を売ったお金や年金、家族の支援を受けてもなお収入が足りず生活が苦しい場合に、はじめて申請が可能です。

生活保護の申請窓口は、住んでいる自治体の福祉事務所です。生活保護担当の窓口で、保護申請について相談してみましょう。町村など一部の自治体では、町村役場での手続きが可能です。

次章では、生活保護の申請件数が増えている理由を解説します。

2. 生活保護の申請件数が増えている理由は?

生活保護の申請件数は、近年増加し続けています。2023年と2024年の申請件数を比較してみましょう。

生活保護の申請件数《2023年/2024年》3/5

生活保護の申請件数《2023年/2024年》

出所:厚生労働省「令和6年度被保護者調査 結果の概要」をもとに筆者作成

2.1 2023年申請件数

  • 1月:2万95件
  • 2月:1万9318件
  • 3月:2万4493件
  • 4月:1万9633件
  • 5月:2万2680件
  • 6月:2万1681件
  • 7月:2万2627件
  • 8月:2万1341件
  • 9月:2万1644件
  • 10月:2万900件
  • 11月:2万1972件
  • 12月:1万8695件
  • 合計:25万5079件

2.2 2024年申請件数

  • 1月:2万154件
  • 2月:1万8427件
  • 3月:2万1610件
  • 4月:2万796件
  • 5月:2万3952件
  • 6月:2万100件
  • 7月:2万5235件
  • 8月:2万1359件
  • 9月:2万1832件
  • 10月:2万1561件
  • 11月:2万2320件
  • 12月:1万8551件
  • 合計:25万5897件

2024年の申請件数は、25万5897件と、2023年の25万5079件に比べて818件、約0.3%ほど増加しています。

なぜ申請件数が増えているのか、想定される理由を解説していきます。

2.3 高齢者世帯が増えている

増加理由のひとつに、受給世帯に高齢者世帯が増えている点が考えられるでしょう。昨年12月時点の保護世帯数164万3111世帯のうち、高齢者世帯は90万2810世帯と54.1%の割合を占めています。加えて、全体の51.1%が単身世帯の高齢者であり、身寄りのない人の保護件数が多くの割合を占めている状況です。

日本の高齢者人口は2024年9月1日現在で3624万3000人で、総人口1億2377万9000人の約30%を占めています。すでに高齢化社会を迎えている日本ですが、今後も高齢者は増加していくでしょう。困窮する高齢者世帯が増えれば、生活保護の申請件数も増えていくと考えられます。

2.4 物価の上昇で最低生活費が増えている

物価の上昇によって最低生活費が増えているのも、保護の申請が増えている要因のひとつと考えられます。

2024年度の消費者物価指数は2020年を100として109.5と、前年度に比べて3.0%上昇しました。直近では111.1とさらに上昇しており、物価による生活の変化を多くの人が実感しているでしょう。

物価が上がれば支出も増えます。しかし、現在の日本は受け取った給与から物価変動の影響を差し引いた実質賃金が△0.3%とマイナスです。収入が増えずに支出だけが増えていくため、必要な生活費だけが増え続けてしまい、家計のやりくりがどんどんと苦しくなるのです。最低生活費の基準の設け方については、今一度見直す段階にあるのかもしれません。

次章では、保護率の高い都道府県を紹介します。

3. 保護率の高い都道府県はどこ?

生活保護を受けている世帯が多い地域はどこなのでしょうか。都道府県内の生活保護の被保護者数を全人口で割った「保護率」の高い都道府県と低い都道府県を上位10位までに絞って見てみましょう。

生活保護「保護率」の高い都道府県・低い都道府県5/5

生活保護「保護率」の高い都道府県・低い都道府県

出所:厚生労働省「令和6年度被保護者調査 閲覧表」をもとに筆者作成

3.1 保護率の高い都道府県

  • 1位
    沖縄県:2.28%
  • 2位
    青森県:2.19%
  • 3位
    北海道:2.14%
  • 4位
    福岡県:2.09%
  • 5位
    東京都:1.94%
  • 6位
    大阪府:1.92%
  • 7位
    高知県:1.81%
  • 8位
    徳島県:1.74%
  • 9位
    鹿児島県:1.42%
  • 10位
    長崎県:1.41%

3.2 保護率の低い都道府県

  • 1位
    富山県:0.26%
  • 2位
    福井県:0.34%
  • 3位
    岐阜県:0.40%
  • 4位
    長野県:0.42%
  • 5位
    石川県:0.43%
  • 6位
    愛知県:0.56%
  • 7位
    岡山県:0.56%
  • 8位
    島根県:0.59%
  • 9位
    新潟県:0.66%
  • 10位
    群馬県:0.67%

※保護率の全国平均:1.62%

このなかでも、保護率の高い都道府県に焦点を当てて、どういった特徴があるのか見ていきましょう。

3.3 保護率が高い都道府県に見られる特徴

保護率の高い都道府県に見られる特徴として、年間収入の低さが挙げられるでしょう。総務省の「2019年全国家計構造調査」で都道府県別の年間収入を見てみると、保護率の高い都道府県の上位3つ(沖縄県・青森県・北海道)の順位は以下のようになっています。

  • 沖縄県:47位
  • 青森県:37位
  • 北海道:44位

いずれも低い順位に位置しており、収入・所得の少なさから生活保護を申請している人が多いと考えられます。このほか、高知県(45位)や鹿児島県(46位)、長崎県(41位)、福岡県(38位)と比較的順位の低い自治体の保護率が高くなっています。

保護率1.94%の東京都が年間収入第1位であるといった例外はありますが、収入や所得の低さは、保護率の高さと関連しているといえそうです。

また、雇用状況も保護率の高さに影響をおよぼしているようです。総務省の「労働力調査」をもとに、保護率が高い都道府県の完全失業率を見てみましょう。

  • 北海道:2.6%
  • 青森県:3.1%
  • 東京都:2.6%
  • 大阪府:3.1%
  • 徳島県:1.7%
  • 高知県:1.7%
  • 福岡県:2.9%
  • 長崎県:2.1%
  • 鹿児島県:2.5%
  • 沖縄県:3.2%
  • 全国平均(参考):2.5%

保護率が高い都道府県では、多くが全国平均の完全失業率を上回っています。失業してしまうと収入が途絶えるため、生活が苦しくなりがちです。とくに雇用保険の基本手当を受け取れなければ、収入源は完全に失われてしまいます。なかなか再就職できずに貯蓄が底をつき、生活がままならなくなってしまうと、その分生活保護の申請は増えていきます。

保護率の高い都道府県では、完全失業率の低下や雇用状況の改善に向けた対策が必要でしょう。

4. まとめ

生活保護の保護件数は、都道府県ごとに差が見られます。こうした差があるのは、賃金や雇用などさまざまな要因が考えられるでしょう。

生活保護の申請については「医療費や生活費が支援されて羨ましい」「不正受給などで印象が悪い」といった意見も目にします。しかし、生活保護は困窮する国民のセーフティネットであり、誰もが申請できる権利を持つものです。

不正受給が起きないような制度設計や、地域ごとの収入・所得格差が是正されるような施策ができれば、誰もが納得できる生活保護制度になるでしょう。

参考資料

石上 ユウキ