3. 保護率の高い都道府県はどこ?
生活保護を受けている世帯が多い地域はどこなのでしょうか。都道府県内の生活保護の被保護者数を全人口で割った「保護率」の高い都道府県と低い都道府県を上位10位までに絞って見てみましょう。
3.1 保護率の高い都道府県
- 1位
沖縄県:2.28% - 2位
青森県:2.19% - 3位
北海道:2.14% - 4位
福岡県:2.09% - 5位
東京都:1.94% - 6位
大阪府:1.92% - 7位
高知県:1.81% - 8位
徳島県:1.74% - 9位
鹿児島県:1.42% - 10位
長崎県:1.41%
3.2 保護率の低い都道府県
- 1位
富山県:0.26% - 2位
福井県:0.34% - 3位
岐阜県:0.40% - 4位
長野県:0.42% - 5位
石川県:0.43% - 6位
愛知県:0.56% - 7位
岡山県:0.56% - 8位
島根県:0.59% - 9位
新潟県:0.66% - 10位
群馬県:0.67%
※保護率の全国平均:1.62%
このなかでも、保護率の高い都道府県に焦点を当てて、どういった特徴があるのか見ていきましょう。
3.3 保護率が高い都道府県に見られる特徴
保護率の高い都道府県に見られる特徴として、年間収入の低さが挙げられるでしょう。総務省の「2019年全国家計構造調査」で都道府県別の年間収入を見てみると、保護率の高い都道府県の上位3つ(沖縄県・青森県・北海道)の順位は以下のようになっています。
- 沖縄県:47位
- 青森県:37位
- 北海道:44位
いずれも低い順位に位置しており、収入・所得の少なさから生活保護を申請している人が多いと考えられます。このほか、高知県(45位)や鹿児島県(46位)、長崎県(41位)、福岡県(38位)と比較的順位の低い自治体の保護率が高くなっています。
保護率1.94%の東京都が年間収入第1位であるといった例外はありますが、収入や所得の低さは、保護率の高さと関連しているといえそうです。
また、雇用状況も保護率の高さに影響をおよぼしているようです。総務省の「労働力調査」をもとに、保護率が高い都道府県の完全失業率を見てみましょう。
- 北海道:2.6%
- 青森県:3.1%
- 東京都:2.6%
- 大阪府:3.1%
- 徳島県:1.7%
- 高知県:1.7%
- 福岡県:2.9%
- 長崎県:2.1%
- 鹿児島県:2.5%
- 沖縄県:3.2%
- 全国平均(参考):2.5%
保護率が高い都道府県では、多くが全国平均の完全失業率を上回っています。失業してしまうと収入が途絶えるため、生活が苦しくなりがちです。とくに雇用保険の基本手当を受け取れなければ、収入源は完全に失われてしまいます。なかなか再就職できずに貯蓄が底をつき、生活がままならなくなってしまうと、その分生活保護の申請は増えていきます。
保護率の高い都道府県では、完全失業率の低下や雇用状況の改善に向けた対策が必要でしょう。
4. まとめ
生活保護の保護件数は、都道府県ごとに差が見られます。こうした差があるのは、賃金や雇用などさまざまな要因が考えられるでしょう。
生活保護の申請については「医療費や生活費が支援されて羨ましい」「不正受給などで印象が悪い」といった意見も目にします。しかし、生活保護は困窮する国民のセーフティネットであり、誰もが申請できる権利を持つものです。
不正受給が起きないような制度設計や、地域ごとの収入・所得格差が是正されるような施策ができれば、誰もが納得できる生活保護制度になるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
- 厚生労働省「生活保護制度」
- 厚生労働省「令和6年度被保護者調査 結果の概要」
- 総務省「人口推計-2025年(令和7年)2月報-」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)3月分及び2024年度(令和6年度)平均」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」
- 厚生労働省「令和6年度被保護者調査 閲覧表」
- 総務省「2019年全国家計構造調査 所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果 結果の要約」
- 総務省「労働力調査 参考表 都道府県別結果(モデル推計値)」
石上 ユウキ