8. 老後世帯が取っておきたい2つの対策
物価が上昇するなかで、年金だけでは生活に不安が残る老後世帯も少なくありません。そのような方は安全性を重視した資産運用や、生活費の見直しを検討してみましょう。
8.1 安全重視型の資産運用で資産の取り崩しペースを遅らせる
「まとまった貯蓄があるが取り崩しが続いている」という世帯は、まず余剰資金を投資に回してみるのが一案です。まだ貯蓄があるうちに、投資信託や国債などを活用した運用を検討してみましょう。
資産運用は「リスクを取れる人がやるもの」と考えがちですが、投資商品は何も株のようにハイリスクなモノばかりではありません。相対的にリスクの低い債券に投資する投資信託や国債など、相対的に変動リスクの小さな商品も存在します。
余剰資金の一部を低リスクな投資商品に投資すれば、一定の利益を得られる可能性があります。金利がきわめて低い預金に預けるよりは、資産の取り崩しペースを遅らせることができるでしょう。金利収入や分配金を生む商品に投資すれば、投資で得た収入で生活費を補てんすることも可能です。
8.2 生活の見直しで無理なく支出を減らす
投資する余剰資産が多くないという方は、生活費の見直しを進めましょう。たとえば、次のような固定費にムダがある場合は、削ることで無理なく支出を抑えられます。
たとえば保険料ですが、現役世代に必要だった保障が、老後世代には手厚すぎるというケースがしばしばあります。家族を養っていたり、ローンの支払いが続いていたりすると、もしもの時に備えるために手厚いプランを選択しがちです。
しかし、子供が独立してローンも完済し、年金を受給できる立場になれば、現役のころほど高額な保険金は不要になります。プランを変更して、保険料を減らすのが、有効な手段の一つとなります。
通信費も確認してみましょう。現役時代には、仕事で頻繁に外出する前提で高額なスマートフォンを使用したり、高い通信プランに加入している方も少なくありません。
老後生活に差し掛かる中で、同様の通信環境が必要であるかを再確認しましょう。外出の機会が減り、出先でのスマートフォンの使用頻度が減ったという場合は、少し安い機種やプランに変えることで、通信量を圧縮できる場合があります。
自宅の通信環境を見直すのも一案です。特にリモートワークなどに備えて高速で高価な通信プランを契約していた方は、老後生活でも同様の環境が必要かを検討してみてください。もし必要なさそうなら。速度を落として通信料を圧縮するのも一案です。
固定費の削減は、月々の支出を減らす効果があるため、収支改善に大きな効果が期待できます。生活が不便にならない程度に、積極的に節約を検討しましょう。そうすれば、老後生活のゆとりを増やせるかもしれません。
9. まとめにかえて
年金は老後の生活を支える大事な収入源ではありますが、それだけで安心できる時代ではなくなってきています。
自分の年金見込み額を把握した上で、自分にとって必要な生活費との差をどう補うかを考えることが、これからますます大切になっていくでしょう。
将来に備える方法はさまざまですが、無理のない範囲での貯蓄や、制度を上手に活用した資産形成もその一つです。
本記事が老後に向けたライフプランを見直すきっかけになれば幸いです。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「ねんきんネット」とは?
中本 智恵