5. 「住民税非課税世帯にならない」ことにメリットはある?
「住民税非課税世帯にならない」ことで享受できるメリットとしては「所得を増やせて自分の理想のライフプランを描きやすい」「自立した生活ができる」などが考えられます。
そのなかでも、いくつかメリットをピックアップして解説していきます。
5.1 社会的信用を得やすい
「社会的信用を得やすい」のは、住民税課税世帯のメリットといえるでしょう。
とくに、クレジットカードの作成やローンの契約、不動産の賃貸などでは、非課税世帯よりも苦労しない可能性が高いです。
クレジット・ローン・賃貸は、契約前の審査で利用代金や賃料などを支払える能力が十分にあるかを確かめられます。支払能力は資産額ではなく収入額をもとに判断されるケースが多いです。
そのため、非課税世帯だと、たとえ資産が十分にあっても「収入に乏しい」と見られかねないのです。
ローン契約や賃貸契約がスムーズにできれば、住居や車などの資産購入も実現しやすくなります。社会的信用をなかなか得にくい点は、非課税世帯の数少ないデメリットのひとつといえます。
5.2 収入の増加につなげやすい
住民税課税世帯になれば、収入を減らさない限りは毎年住民税が課されます。しかし、収入を増やしたほうが、税負担はあっても充実した生活を送れる場合もあるでしょう。
とくに、現代は物価高によりモノやサービスの値段が上がり続けています。直近の消費者物価指数は2020年を100として110.8となっており、前年同月比で3.7%の上昇しています。
なかでも私たちの生活に欠かせない食品については、生鮮食品が138.0、それ以外の食品も121.6と高くなっており、必要なお金は増え続けているのです。
税金を気にせずに働いたり収入を増やしたりできれば、物価高にも備えられます。収入が増えれば、生活にも多少ゆとりを持てるでしょう。
5.3 医療費控除やふるさと納税が利用できる
住民税課税世帯は、医療費控除やふるさと納税により税額を下げられます。
医療費控除では、その年にかかった医療費から10万円を差し引いた金額が所得から控除されます。
通院の多い高齢者世帯や子育て世帯にとっては、有用な控除制度です。そのほかの控除額によっては、住民税が非課税となる可能性もあるでしょう。
ふるさと納税は、好きな自治体に寄附をすることで、寄附金額から2000円を差し引いた分の所得税・住民税が控除される制度です。返礼品を受け取れるのも魅力で、自治体の名産品などを実質2000円で楽しめます。
住民税非課税世帯は、税金がかからないため税控除の対象からは外れます。実質的に自己負担で寄附することになるため、制度の恩恵を十分に受けられません。
住民税課税世帯なのであれば、ふるさと納税を活用してお得に各地の名産品などを楽しんでみましょう。
6. まとめ
住民税非課税世帯になるには、所得要件を満たすのが重要です。長く住民税非課税が続いていても、相続遺産や生命保険の満期返戻金を受け取るなどして、一時的に収入が増える場合もあるでしょう。
また、住民税非課税世帯の収入額は、決して多くはありません。無理に住民税非課税世帯を狙わずに、収入を増やす工夫をすれば、住民税課税世帯であっても余裕のある暮らしを実現できる可能性もあるでしょう。
参考資料
- 東京都主税局「個人住民税」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)2月分」
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
- 総務省「ふるさと納税のしくみ」
石上 ユウキ