3. 社会保険料が高いと「老後の年金額が増える」って本当?
前章でのシミュレーションの通り、4月・5月・6月の期間に残業が増えると、標準報酬月額が上がり、社会保険料が高くなる可能性があります。
この結果、手取りが減ることから「損をする」と感じる方もいるかもしれません。
ただし、社会保険料は単なる掛け捨てではなく、将来の安定した保障を提供するものであるため、必ずしも損をするわけではありません。
本章では、社会保険料の負担が将来的にどのようなメリットをもたらすのかについて詳しく説明します。
3.1 《メリット1》老後の年金額が増額する
老後に受け取る公的年金の一つである「厚生年金」は、標準報酬月額が高ければ高いほど、将来受け取る年金額も増える仕組みです。
厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金部分を含む厚生年金の平均月額は「14万6429円」でした。
もしこの金額を「少ない」「足りない」と感じる場合、社会保険料(厚生年金保険料)を多く支払うことで、将来的に受け取る年金を増やすことができる可能性があります。
3.2 《メリット2》傷病手当金・出産手当金が増える
病気やケガで休職した場合や、出産に伴い仕事を休む際、一定の条件を満たすことで傷病手当金を受け取ることが可能です。
その際の支給額は「標準報酬月額」を基に計算されるため、支給額が高くなります。
このように、社会保険料の負担が増えることで、将来的なセーフティネットの支給額も増えるため、「社会保険料は少ない方が良い」と一概に言うことはできないことがわかります。
4. 「標準報酬月額」の増減による利点と欠点を把握しよう
本記事では、残業が手取り額にどれほど影響を与えるのかについて、シミュレーションを交えて紹介していきました。
4月・5月・6月の期間に残業が増えると、標準報酬月額が上がり、それに伴って社会保険料が増加するため、「損した」と感じる方もいるでしょう。
しかし、社会保険料が増えることで、将来的には「給付金」や「年金」などの面でより充実した保障を受けられることも事実です。
手取りが減るといったネガティブな側面だけでなく、厚生年金が増えるといったポジティブな点も考慮し、全体的な視点で判断することが重要です。
参考資料
- 日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)」
- 全国健康保険協会「令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
和田 直子