2. 残業代が多いとどのくらい「社会保険料」の負担額は変わる?

本章では、残業代の増加によって「厚生年金保険料」と「健康保険料」にどのような影響があるのか、それぞれシミュレーションを用いて具体的に見ていきます。

2.1 厚生年金保険料のケース

厚生年金の保険料率は一般被保険者で「18.300%」に設定されており、企業と従業員がそれぞれ半分ずつ負担します。

そのため、従業員が実際に支払う割合は「9.150%」です。

たとえば、報酬月額20万円(標準報酬月額20万円)の場合と報酬月額25万円(標準報酬月額26万円)の場合、「厚生年金保険料」は、それぞれ下記のようになります。

  • 報酬月額20万円の場合:1万8300円
  • 報酬月額25万円の場合:2万3790円

残業代が5万円増え、報酬月額が25万円に達した場合、標準報酬月額の等級が上がり、その結果、厚生年金保険料が約5000円増加します。

年間では約6万円の負担増となり、この差額は決して小さいとは言えないでしょう。

2.2 健康保険料のケース

次に、健康保険料についてもシミュレーションを行います。

健康保険料の料率は加入する健康保険組合によって異なりますが、たとえば東京都在住で40歳未満の方が全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合、保険料率は9.91%となります。

なお、健康保険料も会社と折半される形で徴収がされます。

健康保険料(協会けんぽ東京支部)

健康保険料

出所:全国健康保険協会「令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)」

たとえば、報酬月額20万円(標準報酬月額20万円)の場合と報酬月額25万円(標準報酬月額26万円)の場合、「健康保険料」は、それぞれ下記のようになります。

  • 報酬月額20万円の場合:9910円
  • 報酬月額25万円の場合:1万2883円

健康保険料は厚生年金保険料ほど大きな負担増にはなりませんが、それでも月に約2000円、年間で約2万4000円の天引き額が増えることになります。

そのため、標準報酬月額に影響を与えやすい4月・5月・6月の期間は残業を控え、等級を下げることを意識する人が多いのでしょう。