5. 「おふたりさま」の介護問題

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子どもがいないことで、将来介護になったり、認知症になったりした場合に、代わりに財産管理や日常生活での契約などをしてくれる人を見つけておく必要があるでしょう。

5.1 任意後見制度で財産管理を任せる

おすすめの対策は「任意後見制度」を利用することです。まだ、判断能力が十分あるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人(任意後見人)と財産管理などの方法について公正証書で契約を結んでおく制度です。任意後見人は配偶者や親族だけでなく、誰でもなることができます。

元気なうちに信頼できる人を選んで任命できるのがメリットですが、任意後見制度で委任できるのは、生前の財産管理に限られ、死後の事務処理などはできません。この場合は別途「死後事務委任契約」を結ぶ必要があります。

5.2 民事信託(家族信託)を活用する

甥や姪など信頼できる親族に財産管理を託したい場合は「民事信託」という選択もあります。民事信託は生前の財産管理と死後の財産継承を一つの契約で実現することができます。

任意後見制度は、本人の財産保護が目的であるため、積極的な資産運用や不動産売買などは困難です。民事信託はこれが可能であるため、アパート経営で賃料収入を得たり、株式投資で資産を増やしたりすることができます。

また、介護施設に入居が必要となった時に、自宅を売却して入居費用に充てることも可能です。このように柔軟に対応できるのが民事信託のメリットですが、一方で、民事信託にはできないこともあります。たとえば、任意後見人には認められている生活、療養看護に関する手続き(身上監護)は民事信託ではできません。

6. 制度を活用して安心を手に入れる

子どもがいない夫婦の場合、将来の財産管理や生活支援に不安を覚えると思います。しかし目的に応じて事前に対策をしておけば、これらの不安は少なくなります。すべての事案に備えられる制度は残念ながらありませんが、いくつかの制度を組み合わせることで、将来の不安はだいぶ解消されるでしょう。

相続対策では「遺言書」は不可欠です。残されたパートナーが安心して暮らせるように、お互いに遺言書を準備しておくことをおすすめします。

参考資料

石倉 博子