3. 遺言書がない場合の遺産分割

故人が遺言書を残さずに亡くなった場合、法定相続人と遺産分割協議をしなければなりません。遺産分割協議は相続人全員の参加と合意が必要です。協議が整うまでは、故人の財産は相続人共有の財産となるため、たとえ配偶者であっても故人の預貯金に手を付けることはできません。

たとえば夫が亡くなり、妻と夫の兄弟姉妹が相続人になった場合、夫の兄弟姉妹と話し合いができなければ、夫婦ふたりで協力して築いた財産であっても手を付けることができず、妻の生活費の引き出しさえできない事態に陥る可能性があります。

また、協議が整って、兄弟姉妹に遺産を渡すことになれば、準備してきた老後資金から相続分を支払ったり、終の棲家を売却して資金を捻出したりする必要が出てくるかもしれません。そうなれば、残された妻の生活に支障が出てきます。

こうした事態を防ぐためには、遺言書の作成が重要です。

4. 「おふたりさま」は遺言書が必須

遺言書

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遺言書は相続人の協議による分割よりも優先されるので、残された配偶者に全財産を残したければ、遺言書を作成しましょう。法的に認められる遺言書に「配偶者にすべての財産を相続させる」という内容が書かれていれば、故人の親や兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がなく、配偶者にすべての財産を残すことができます。

ただし、故人の親が存命の場合は、「遺留分」が請求される場合があります。これは、遺言の内容に関係なく一定の相続人が定められた割合の遺産を受け取ることができる権利です。兄弟姉妹には遺留分はありませんが、親(直系尊属)には遺留分が認められるので、一定の資産は準備しておくといいでしょう。なお、この場合の遺留分は法定相続分の半分(1/6)となります。