7. 【老齢年金】繰上げ・繰下げ受給で年金額はどう変わる?
一般的な老齢年金の受給開始年齢は65歳ですが、「繰上げ受給」で前倒しする方法と、「繰下げ受給」で後ろ倒しする方法を選ぶことができます。
受給開始時期や、年金額の減額率・増額率についても整理しておきましょう。
7.1 繰上げ受給
- 60歳から65歳になるまでの間で受け取り始める
- 原則として「老齢基礎年金・老齢厚生年金」はセットで繰上げ請求が必要
- 繰り上げた月数に応じて年金が減額される
- 減額率:繰り上げた月数×0.4%(最大24%)
7.2 繰下げ受給
- 65歳で受け取らずに「66歳以後75歳まで」で受け取り始める
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げが可能。どちらか一方のみ繰下げすることできる
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繰り下げた月数に応じて年金が増額される
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増額率:繰り下げた月数×0.7%(最大84%)
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なお、いったん決まった「繰上げ受給の減額率」「繰下げ受給の増額率」は、生涯適用されます。繰上げ受給をした場合、65歳以降も減額された年金額が続く点には留意が必要です。
また、特別支給の老齢厚生年金には繰下げ制度は設けられていません。
8. まとめにかえて
今回は「年金一覧表」を用いて国民年金と厚生年金の「平均年金月額」を確認しました。
年金受給額は、現役時代の保険料納付状況等により決定します。老齢厚生年金を受給する人は、現役時代の年金加入期間に加えて、給与や賞与などの報酬が老後の年金額に大きく影響することも理解しておきましょう。
年金額は賃金や物価の変動を背景に毎年度見直しが行われますが、現行の年金改定ルールにおいて、物価上昇率を上回ることはありません。
いまの老齢年金世代は、昨今の急速な物価上昇の中、増えたようで増えていない年金収入で生活費をやりくりしていることになります。
年金収入だけで不足する場合には貯蓄を取り崩して補填する必要がありますが、十分な貯蓄がない場合は不安な日々を過ごすことになるでしょう。
現役世代の人たちはこうした背景も考慮しながら、老後に向けてできるだけ多くの貯蓄を準備していきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
渡邉 珠紀