生活保護は、2025年度から生活費への支援である生活扶助の特例加算額が引き上げられます。現行制度は1000円の上乗せですが、2025年度からは500円上乗せとなる予定です。
生活保護は、若い人から高齢者までさまざまな人が受けられる制度です。保護を受けるには、一定の基準を満たす必要があります。
一方、私たちは65歳になると多くの人が老齢年金を受給し始めます。生活保護を受けている場合、公的年金は受給できるのでしょうか。この記事では、生活保護と年金の関係性について、解説します。
1. 生活保護の概要
生活保護は、生活に困窮する人を保護し、自立した生活が送れるよう支援する制度です。「扶助」という形で生活にかかわる各種費用を支援し、必要最低限度の生活を送れるよう保障します。
主な扶助は以下のとおりです。
- 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
- 住宅扶助:アパート等の家賃
- 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
- 医療扶助:医療サービスの費用
- 介護扶助:介護サービスの費用
- 出産扶助:出産費用
- 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
- 葬祭扶助:葬祭費用
日常的な支出のほか、家賃や教育費、医療費などに対して扶助を受けられます。介護や出産にも扶助があり、安心して医療を受けられるのが特徴です。
受給金額は、最低生活費をもとに決められます。最低生活費はそれぞれの扶助基準額を足し合わせたものであり、居住地によって異なります。収入が最低生活費に満たない場合、収入との差額が生活保護費として支給される形です。
次章では、生活保護を受けている場合の年金受給について解説します。
2. 生活保護を受けていても公的年金は受給できる?
生活保護を受けていても、公的年金は受給可能です。ただし、生活保護費として支給される金額は、最低生活費から年金収入や就労収入等を差し引いた金額です。
生活保護を受けるには、以下の4点をすべて満たす必要があります。
- 資産の活用:預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却して生活費に充てること。
- 能力の活用:働ける場合は、能力に応じて労働すること。
- あらゆるものの活用:年金や手当など他の制度で給付を受けられる際は、それらを優先して活用すること。
- 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる際は、援助を受けること。それでもなお収入が最低生活費に満たない場合は、保護を適用する。
年金給付が受けられる場合、生活保護の扶助を受けるよりも年金受給が優先されます。年金を受給してもなお最低生活費に満たない場合に、はじめて生活保護を受けられるのです。
そのため、生活保護を受けているからといって年金がカットされたり停止されたりする心配はありません。
このほか、生活保護を受けるには、不要な資産はすべて売却し生活費に充てる必要があります。また、働けるなら労働して収入を得るよう決められています。
もし親族から金銭援助を受けられるなら、優先されるのは生活保護ではなく援助です。親族からの援助があってもなお最低生活費に満たないのであれば、扶助を受けることになります。
次章では、生活保護の受給世帯割合について解説します。
3. 生活保護の受給世帯割合
2024年10月時点での生活保護の受給世帯割合は、以下のとおりです。
累計
- 総数:164万3145世帯(100%)
- 高齢者世帯:90万5057世帯(55.1%)
- 母子世帯:6万2597世帯(3.8%)
- 障害者世帯:22万7307世帯(13.8%)
- 傷病者世帯:18万6550世帯(11.4%)
- その他の世帯:26万1634世帯(15.9%)
単身者世帯
- 総数:139万3508世帯(100%)
- 高齢者世帯:84万2056世帯(60.4%)
- 母子世帯:なし
- 障害者世帯:20万2934世帯(14.6%)
- 傷病者世帯:16万2071世帯(11.6%)
- その他の世帯:18万6447世帯(13.4%)
2人以上の世帯
- 総数:24万9637世帯(100%)
- 高齢者世帯:6万3001世帯(25.2%)
- 母子世帯:6万2597世帯(25.1%)
- 障害者世帯:2万4373世帯(9.8%)
- 傷病者世帯:2万4479世帯(9.8%)
- その他の世帯:7万5187世帯(30.1%)
生活保護受給の対象である高齢者世帯の割合は、全体で55.1%となっています。とくに単身者世帯では60.4%と、単身の被保護世帯の6割を占めています。2人以上の世帯でも、被保護世帯の約4分の1が高齢者世帯です。
生活保護を受給している高齢者世帯の多くが、十分な年金を受け取れておらず生活保護を受けているといえるでしょう。
次章では、年金の平均受給月額を解説します。
4. 年金の平均受給月額はいくら?
国民年金・厚生年金の平均受給月額は以下のとおりです。
国民年金
- 平均:5万7584円
- 男性:5万9965円
- 女性:5万5777円
厚生年金
- 平均:14万6429円
- 男性:16万6606円
- 女性:10万7200円
国民年金の平均は5万7584円、厚生年金の平均は14万6429円です。
国民年金のみを受給しており、ほかに収入がない人は、毎月平均で約6万円の収入しかありません。よって、生活保護の受給対象となる可能性があるでしょう。
もし国民年金以外にも収入があるなら、その収入額によっては生活保護がなくても自立した生活ができていると考えられます。
一方、厚生年金の平均は約15万円です。1級地在住の生活保護の最低生活費は約13万円であり、生活保護の対象からは外れることがわかります。
高齢者が生活保護を受給できるかどうかは、現役時代の保険料納付状況や65歳からの年金受給額によるといえるでしょう。
5. まとめ
65歳になれば、生活保護を受けているかどうかにかかわらず、年金を受給できます。年金は生活保護の扶助よりも優先されるため、受給額次第では保護を外れることもあるでしょう。
一方、年金受給中にほかの収入が激減し、生活保護を受けることを検討するケースもあるでしょう。この場合も年金自体はカットされないため、有効活用しながら生活を立て直すとよいです。
参考資料
- 厚生労働省「福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)」
- 厚生労働省「生活保護制度」
- 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
- 厚生労働省「令和6年度被保護者調査 2024年度10月 閲覧表」
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
石上 ユウキ