4.1 老齢基礎年金(国民年金)

老齢基礎年金は、国民年金保険料の納付済月数や免除期間を元に算定されます。

国民年金は20歳から60歳の日本居住者は原則として納付の義務があり、被保険者の保険料は一律です。そのため、上限期間である40年間で未納付がない場合は受給金額も全員一律となります。(2024年は満額年間81万6000円)

未納付期間や免除期間がある場合、その月数によって満額から差し引かれていきます。

また、会社員として厚生年金保険に加入したら、加入している厚生年金保険が国民年金の費用を負担するため、別途自分で国民年金の保険料を納める必要はありません。

4.2 老齢厚生年金

厚生年金に加入していた時の報酬額や加入期間等に応じて年金額が計算されます。

計算の基礎となる厚生年金の加入期間と加入中の報酬によって、受給できる年金額も大きく異なります。

また、現役時代に厚生年金に加入していない、個人事業主やフリーランスの場合は厚生年金保険の加入期間がないため、国民年金のみを受給することになります。

4.3 日本年金機構の平均値との比較

日本年金機構が発表している、平均的な夫婦世帯の受給額は、「平均標準報酬43万9000円で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準」となっています。

夫婦の一方が厚生年金に加入しながら平均して月額44万円程度で40年間の勤務をして、その配偶者は働かずにいた場合の平均ということになります。

つまり、配偶者が少しでも厚生年金に加入しながら働いていたとしたら、これよりも受給額が上振れる可能性もあります。反対に、2人とも厚生年金の被保険者期間がなければ年金受給額はこれよりも大幅に少なくなる可能性もあります。

このように、年金の受給額は現役時代の報酬額や働き方などによって変わってきます。さらに、受給開始年齢によっても、増額・減額するためその受給額の個人差は本当にさまざまです。

そのため、自身の老後の収支を試算する際は、日本年金機構のホームページによる試算ツールや、ねんきん定期便でおおよその年金受給額を算出してみることをお勧めします。

5. 試算の注意点

ここまで、平均貯蓄額と、標準的な年金受給額や生活費で検討をしましたが、自身の生活設計をする際に注意をしなければいけないことがあります。

実際に自身の老後生活を計画する際には、以下の点を考慮してください。

5.1 【貯蓄額】

今回は「平均貯蓄額」で検討をしましたが、平均額とは65歳以上の世帯の全ての貯蓄額を足して世帯数で除すことで算出した数字です。

そのため、一定数の貯蓄が大幅に多い世帯がいる場合には、平均値も大きく上昇します。

貯蓄額については平均額をスタンダードであると考えずに、自分の現状を整理することが大切です。

50歳代~70歳代(総世帯)の貯蓄額平均と中央値

50歳代~70歳代(総世帯)の貯蓄額平均と中央値

出所:金融広報中央委員会「(参考)家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和5年)」をもとに筆者作成

5.2 【月の支出額】

月々の生活費は、世帯によって生活のどこに重点を置くかにより大きく異なります。そのため、現在の自分がどのくらいの生活費を使っているのかを認識し、その支出で老後を暮らすことを想定して試算をすることが重要です。

現在の生活費を改めて見直すことで、不要な支出を洗い出すことにも繋がります。

6. まとめにかえて

65歳以上の無職夫婦にとって、老後の生活を年金だけで暮らせるかどうかは、老後の生活設計において重要な問題です。

65歳以降、働かずに年金収入だけで生活をしようと考えた場合には、それまでに月々の収支を計算して不足する部分を貯蓄しておく必要があります。

なるべく早いうちから、老後の計画を立てて目標金額を設定して、そこに向かってどのように資産を作っていくかを検討していくことが大切です。

給与収入だけではなく投資なども活用することにより、効率的に資産形成をすることも可能です。自身の老後の生活について、ぜひ時間を作って考えてみてください。

参考資料

斎藤 彩菜