3. 賞与・給与から見える国家公務員の処遇課題
今年は給与法の改正が間に合わなかったことでボーナスが減額となりましたが、追加支給により例年を上回る水準の金額が支給されます。
また、国家公務員の平均給与は2023年が41万2747円、2024年は41万4801円と、わずかではありますが増加しています。
収入が安定して増加しているにもかかわらず、今年の国家公務員受験者は減少傾向です。大卒程度の一般職の申込者は2万4240人で、前年度に比べ2079人減少しました。
また、専門職は2万1693人で、2933人減少しました。過去12年間においても、2016年から申込者数は減少し続けています。
これは、国家公務員の労働環境に課題があることが考えられます。人事院の「令和5年度 年次報告書」によれば、月45時間・年360時間の超過勤務上限を超えて働いた職員は、全体の16.0%です。
各省庁などの本府省に限定すれば、28.5%と約3割が超過勤務上限を超えて働いています。
また、2023年3月に人事院が公表した国会対応業務に関するアンケートでは、2021年度時点で、31の府省が超過勤務の状況は前年度と変わっていないと回答しています。
主な要因としては「質問通告の遅さ」「答弁案のすり合わせ」「答弁の作成」などが挙げられます。国家公務員の国会対応業務は、非常に厳しい状況下で行われているのです。
給与・賞与のアップに加えて、労働環境や国会対応の見直しなどの処遇改善は早急に対処すべき課題といえるでしょう。
4. まとめ
国家公務員の冬のボーナスは約65万円でした。今年は増額分が追加支給されるため、支給後の金額は約72万円となります。民間企業と比べてもほぼ同水準といえるでしょう。今後も継続的な賃金上昇が期待されます。
一方で、労働環境については課題が山積しています。国家公務員は全体の奉仕者という立場にあたりますが、勤労者でもあります。早急な処遇改善が求められるでしょう。
参考資料
- 人事院「令和6年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」
- 衆議院「議事経過 第212回国会(令和5年11月14日)」
- 衆議院「議事経過 第216回国会(令和6年12月12日)」
- 一般財団法人労務行政研究所「東証プライム上場企業の2024年年末一時金(賞与・ボーナス)の妥結水準調査」
- 人事院「令和5年国家公務員給与等実態調査報告書」
- 人事院「令和6年国家公務員給与等実態調査報告書」
- 人事院「2024年度国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)及び専門職試験(大卒程度試験)の申込状況」
- 自由民主党「[国家公務員給与法]公務員全体の処遇改善が必要」
- 人事院「国会対応業務に係る各府省の実態について (全府省(44府省等)に対するアンケート(令和4年11月~令和5年1月実施)の結果)」
石上 ユウキ