年収が高いかどうかを見る場合の目安の一つとして、「1,000万円の壁」があります。しかし、首尾よくその年収を稼げるようになってもそれなりの税金の支払いがついてまわります。ここでは、年収1,000万円の場合、税金はどれくらい発生し、手取りはどうなるのかについて見ていきます。
税金はどれくらいかかるのか?
まずはどれくらいの税金がかかるのかについて少し詳しく見ていきましょう。税金には所得税と住民税があり、住民税は住んでいる市町村で若干の違いがあります。手取り収入がどれくらいになるかを見るポイントは、「課税所得額」「税金」「社会保険料」がキーワードとなります。
課税所得額と各控除
まず税金を計算する場合ですが、最初に「課税所得額」を算出します。課税所得額を求めるには給与から各種控除を引きますが、その控除には以下のように基礎控除、給与所得控除(会社員やパート、アルバイトの場合)、健康保険・厚生年金・雇用保険といった保険料に対する社会保険料控除が挙げられます。
基礎控除
所得税の基礎控除の38万円と住民税の基礎控除の33万円
給与所得控除
収入金額 | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 650,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 年収×40% |
1,800,001円から3,600,000円まで | 年収×30%+180,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 年収×20%+540,000円 |
6,600,001円から10,000,000円まで | 年収×10%+1,200,000円 |
10,000,001円以上 | 2,200,000円 |
注:収入金額が660万円までの場合には、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で給与所得の金額を求めるため、上記の計算とは若干異なる場合があります(国税庁「給与所得者と税 給与所得の金額の計算 給与所得控除額(平成30年分)」参照)
収入金額×10%+120万円という算定式をベースに年収1000万円の場合の給与所得控除を計算すると、「1000万円×10%+120万円=220万円」で、給与所得控除額は220万円となります。
社会保険料の控除額
社会保険料の料率や対象金額は勤務先や住んでいる地域により異なりますのであくまで参考としてご紹介します。
各社会保険料の料率は、厚生年金が9.15%、健康保険4.95%、雇用保険0.30%となっており、合計で14.40%となります。そこでこの料率をベースに社会保険料控除額を計算すると、「1000万円×14.4%= 144万円」で社会保険料控除額は144万円となります。(参考:年収1000万の手取りはいくら?所得税と住民税の計算方法|お金のカタチ)
課税所得の計算
課税所得額と3つの控除についての金額の計算ができたところで、税金の算出に必要な課税所得額を計算していきます。課税所得額は先ほど計算した各控除額を引くことで求められます。以下のような計算により課税所得額を求めます。
上述の3つの控除額(所得税の基礎控除38万円、給与所得控除220万円、社会保険料控除144万円)の合計額である402万円を給与所得から以下のように差し引きます。
所得税課税所得:1000万円 - 402万円 = 598万円
同時に住民税を計算する際の課税所得を求めます。上述の3つの控除額(住民税の基礎控除33万円、給与所得控除220万円、社会保険料控除144万円)の合計額である397万円を給与所得から以下のように差し引きます。
住民税課税所得:1000万円 - 397万円 = 603万円
所得税額と住民税額、そして手取り収入額の計算
次に所得税額と住民税額を算出し、手取り収入額を求めます。
まず、年収1000万円に対する課税所得額はすでに計算した「598万円」ですので、所得税の計算は以下のようになります。
所得税:課税所得598万円 × 20% - 控除額42.75万円 = 76.85万円
次に年収1000万円の課税所得は上述の「603万円」なので住民税の計算は次のようになります。
住民税:課税所得603万円 × 10% + 均等割5000円 - 調整控除2500円 = 60.55万円
したがって、所得税額と住民税額の合計は137.4万円(所得税額76.85万円 + 住民税額60.55万円)となり、この合計税額と社会保険料を給与所得から差し引いて以下のように手取り収入額を算出します。
年収1000万円の手取り給料:1000万円 - 所得税および住民税137.4万円 - 社会保険料144万円 = 718.6万円
結局のところ手取り収入額は約720万円で、課税率はおよそ28%弱ということになりました。
手取り収入額は配偶者やお子さんの有無、加入している保険の額によっても異なりますので、多少の違いはありますが、概ね年収1,000万円の手取り収入額は720万円から800万円の間で収まると考えられます。
課税のタイムラグに注意!
年収が1,000万円を超えてうれしいという方も注意すべき点があります。それは課税のタイムラグです。
住民税は前年の収入に対して課税されますので、翌年の収入額にかかわらず、あくまで前年の年収に相当する税金を払わなければなりません。従って、リストラや年収ダウンなどにより翌年の収入が下がっても、前年の年収に相当する高い税金を支払う必要がある点に注意が必要です。
まとめ
今回は年収1,000万円に対する税金などを見てきましたが、驚くほど少なくなる手取り収入に愕然とした方もいるかもしれません。しかし、税金を払うことで社会貢献をしていると思えば少しは救われるのではないでしょうか。
関連記事
- 年収1000万円の人の手取り給与はいくらか
- 年収と所得、手取り収入の違い?転職の際は表現に注意!
- 年収1000万円を手にできる仕事とは何か
- 年収1000万円超のプレーヤーに頑張ってなっても6月の給与は要注意
- 個人事業主とは?経費と確定申告・税金や消費税還付を徹底解説!
LIMO編集部