今年は新NISAのスタートから始まり、日銀が17年ぶりにマイナス金利政策を解除するなど、日本経済が大きく動いた年です。
一方で、昨年からのインフレは今年も続き、物価上昇が強く意識される年でもありました。ニュース等で「生活が苦しい」という巷の声を聞くことも、もはや珍しいことではなくなりました。
インフレが正常な経済のサイクルであることを考えると、金利のある世界が戻り、物価上昇が適正な範囲で続くことは決して悪いことではありません。
しかしながら、長らくデフレ状態が続き、低賃金、低価格に慣れてしまった私たちにとって、物価の上昇は生活の苦しさに直結するイメージがあるのも事実です。
とくに年金の場合、実際の物価や賃金の伸び率から調整率が控除されるため、給付額の伸び率が低く抑えられる仕組みになっています(マクロ経済スライド)。そのため、年金受給世帯では、物価上昇が家計に与える影響をより強く感じやすいかもしれません。
そこで今回は、シニア世代のお金事情をチェックしてみましょう。とくに60歳代の貯蓄額や年金受給額などを確認しますので、さっそくみていきましょう。
1. 【60歳代・二人以上世帯】みんなの貯蓄は平均いくら?
生活費に対し年金額が十分でなければ、足りない部分は貯蓄から支払うことになります。まずは60歳代世帯の貯蓄事情をみていきましょう。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」から、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額を確認します。
1.1 【60歳代・二人以上世帯】金融資産保有額の平均と中央値
- 平均:2026万円
- 中央値:700万円
※金融資産保有額には預貯金以外の株式や投資信託、保険商品などの金融商品残高が含まれます。
ここでは中央値に注目してみましょう。中央値とは、集めたデータを順番に並べていき、とくに真ん中に位置するデータことを指します。
60歳代の金融資産保有額の中央値は700万円ですから、ちょうど真ん中に位置する人の値が700万円であり、半数の方の保有資産額が700万円以下、あるいは700万円以上ということになります。
数年前に「老後2000万円問題」が話題になりましたが、現在ではその額は3000万円、4000万円とも言われています。
リタイア後は、介護費用など老後特有の支出が生じる可能性もありますから、貯蓄額が700万円以下の場合は、早急に何らかの対策が必要かもしれません。
1.2 【60歳代・二人以上世帯】貯蓄額ごとの世帯割合
貯蓄額の平均値と中央値を確認したところで、次に貯蓄額ごとの割合をみていきましょう。
- 金融資産非保有:21.0%
- 100万円未満:5.9%
- 100~200万円未満:4.5%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:3.0%
- 400~500万円未満:1.9%
- 500~700万円未満:7.2%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:6.8%
- 1500~2000万円未満:5.4%
- 2000~3000万円未満:9.5%
- 3000万円以上:20.5%
60歳代・二人以上世帯のなかで、金融資産を保有していない世帯は21.0%、一方、2000万円以上の世帯は全体の30%、さらに3000万円以上保有している世帯は全体の20.5%を占めています。
2. 【厚生年金・受給額一覧】60歳代の平均年金額
厚生労働省の資料より、毎月の生活費の柱となる厚生年金と国民年金の受給額を見ていきましょう。
厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、60歳代の平均年金受給月額を確認します。
〈全体〉平均受給額(月額):14万3973円
〈男性〉平均受給額(月額):16万3875円
〈女性〉平均受給額(月額):10万4878円
※国民年金部分を含む
厚生年金は、現役時代の年金加入期間、給与や賞与などの報酬により、年金額が計算されます。そのため、個人によって受給額に差が生じます。
年金額が少ない方であれば1万円ほど、多い方であれば30万円以上受け取っている方もいるので、自分の詳しい年金額が知りたい方は、ねんきんネットやねんきん定期便などで確認してみましょう。
3. 【国民年金・受給額一覧】60歳代の平均年金額
次に同資料より、60歳代の平均年金受給月額を確認します。
〈全体〉平均受給額(月額):5万6316円
〈男性〉平均受給額(月額):5万8798円
〈女性〉平均受給額(月額):5万4426円
国民年金(老齢基礎年金)をメインで受給するのは、第1号被保険者である自営業者や第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養者)です。
国民年金の保険料は一律なので、年金額の多寡は保険料の納付期間によって決まります。ただし、年金額がもともと大きくないので、厚生年金のような大きな差は生じません。
ちなみに令和6年度の年金額は満額で6万8000円となっています。
4. 老後は思ったよりもお金がかかる!前もって準備を
今回は、60歳代のお金事情について、とくに貯蓄額や年金額を確認しました。
総務省の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみ・無職世帯の家計収支は、可処分所得が21万3042円、消費支出が25万959円となっており、不足分は3万7916円となっています。実質的には赤字です。
この赤字分は貯蓄から取り崩すことになるので、ある程度の貯蓄はリタイア時点で保有しておく必要があります。
「年をとれば、生活費はそんなに必要ないのでは?」と考える方もいらっしゃいますが、世帯主が75歳~79歳の二人以上世帯の消費支出は24万5107円、80歳~84歳の世帯では22万4648円、85歳以上の世帯では22万8685円となっています。
85歳以上の世帯であっても23万円ほどの支出が必要で、年齢を経るごとに大きく減少しているわけではありません。
ある程度の支出は前もって計算に入れておくことはもちろんですが、介護や家の修繕費など、大きな金額が必要な場合にも対応できるように、若いうちから準備を進めておくことが大切です。


