2024年は「物価高」により、各所で影響が及んだ年と言っても過言ではありません。

輸入品や食品価格の高騰、配送物の価格見直しなど、身近なところで物価高を実感した方も多いのではないでしょうか。

2025年も引き続き、物価の上昇が続いています。

厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2025年度の公的年金額は「前年度と比べ1.9%増加する」ことがわかりました。

しかし、公的年金の支給額は3年連続で増加している一方で、それを上回る物価の上昇が各世帯の生活に大きな影響を及ぼしているのが現状です。

現役世代の給与は、最低賃金の引き上げなどにより賃上げに向けて動いているものの「年収の壁」の制度上の実態や、物価上昇により実質価値が伴っていないように思えます。

本記事では、高齢者世帯に焦点をあてて、60歳代二人以上世帯の「貯蓄額」と「年金の受給額」についてみていきながら、シニア世代のお金事情を確認していきます。

※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。

1. 【老後の入り口】「60歳代・二人以上世帯」の貯蓄は平均いくら?

まずは、60歳代の世帯における貯蓄状況を確認してみましょう。

金融広報中央委員会が発表した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」を参考に、60歳代の二人以上世帯における金融資産の保有状況を見ていきます。

※金融資産保有額には預貯金以外の株式や投資信託、保険商品などの金融商品残高が含まれます。

【写真全6枚】60歳代・二人以上世帯の貯蓄額円グラフ。以降で「厚生年金の平均額」をご紹介!1/6

【貯蓄額の円グラフ】60歳代・二人以上世帯

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

1.1 【60歳代・二人以上世帯】平均貯蓄額と中央値をチェック

  • 平均:2026万円
  • 中央値:700万円

1.2 【60歳代・二人以上世帯】貯蓄額ごとの世帯割合をチェック

  • 金融資産非保有:21.0%
  • 100万円未満:5.9%
  • 100~200万円未満:4.5%
  • 200~300万円未満:4.3%
  • 300~400万円未満:3.0%
  • 400~500万円未満:1.9%
  • 500~700万円未満:7.2%
  • 700~1000万円未満:6.7%
  • 1000~1500万円未満:6.8%
  • 1500~2000万円未満:5.4%
  • 2000~3000万円未満:9.5%
  • 3000万円以上:20.5%

60歳代の二人以上世帯では、「貯蓄ゼロ円=金融資産非保有世帯」が21.0%、一方で「3000万円以上の貯蓄がある世帯」は20.5%となっており、この2つの世帯がほぼ同じ割合を占めています。

最近ではシニア世代が働き続けるための制度が整いつつあり、還暦を過ぎても現役で働く人が増加しています。

また、これから定年退職を迎える人や、相続や贈与を予定している世帯も少なくないでしょう。

次に、厚生労働省の資料を基に、令和時代におけるシニア世代の年金事情を詳しく見ていきます。

2. 【年金一覧表】令和シニアの「厚生年金」の平均月額を確認

厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、令和シニアの平均受給額を見ていきましょう。

  • 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万7200円

※国民年金部分を含む

  • 1万円未満:4万4420人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4367人
  • 2万円以上~3万円未満:5万231人
  • 3万円以上~4万円未満:9万2746人
  • 4万円以上~5万円未満:9万8464人
  • 5万円以上~6万円未満:13万6190人
  • 6万円以上~7万円未満:37万5940人
  • 7万円以上~8万円未満:63万7624人
  • 8万円以上~9万円未満:87万3828人
  • 9万円以上~10万円未満:107万9767人
  • 10万円以上~11万円未満:112万6181人
  • 11万円以上~12万円未満:105万4333人
  • 12万円以上~13万円未満:95万7855人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3629人
  • 14万円以上~15万円未満:94万5907人
  • 15万円以上~16万円未満:98万6257人
  • 16万円以上~17万円未満:102万6399人
  • 17万円以上~18万円未満:105万3851人
  • 18万円以上~19万円未満:102万2699人
  • 19万円以上~20万円未満:93万6884人
  • 20万円以上~21万円未満:80万1770人
  • 21万円以上~22万円未満:62万6732人
  • 22万円以上~23万円未満:43万6137人
  • 23万円以上~24万円未満:28万6572人
  • 24万円以上~25万円未満:18万9132人
  • 25万円以上~26万円未満:11万9942人
  • 26万円以上~27万円未満:7万1648人
  • 27万円以上~28万円未満:4万268人
  • 28万円以上~29万円未満:2万1012人
  • 29万円以上~30万円未満:9652人
  • 30万円以上~:1万4292人

※国民年金部分を含む

厚生年金は、現役時代の年金加入期間や給与、賞与などの報酬額に基づいて保険料が決まり、その結果年金額が算出されるため、個人ごとに年金額には差が生じることを理解しておくことが重要です。

3. 【年金一覧表】令和シニアの「国民年金」の平均月額を確認

  • 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
  • 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
  • 1万円未満:5万8811人
  • 1万円以上~2万円未満:24万5852人
  • 2万円以上~3万円未満:78万8047人
  • 3万円以上~4万円未満:236万5373人
  • 4万円以上~5万円未満:431万5062人
  • 5万円以上~6万円未満:743万2768人
  • 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
  • 7万円以上~:227万3098人

国民年金(老齢基礎年金)は、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入対象となり、もし一度も厚生年金に加入していない場合、老後に受け取る年金は国民年金のみとなります。

国民年金の保険料は、収入や年収に関係なく全員同じ金額で、納付期間が年金額に影響するため、厚生年金のように個人差が大きくなることは少ないです。

年金額は世帯ごとに異なり、生活費も世帯によって異なるため、年金収入だけで生活できると感じている世帯は少数派であると考えられます。

では、年金収入だけで生活できるシニア世帯の割合はどの程度なのでしょうか。

4. シニアの58.3%が「年金収入だけでは生活できていない」深刻な現状

厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、「年金収入のみ」で生活しているシニア世帯は全体の41.7%でした。

高齢者世帯の総所得に占める公的年金の割合4/6

高齢者世帯の総所得に占める公的年金の割合

出所:厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」

つまり、残りの58.3%の世帯は、勤労収入や貯蓄の取り崩し、家族からの仕送りなど、公的年金以外の資金を使って生活していることになります。

また、前回の同調査では「年金だけで生活する高齢者世帯」の割合は44.0%でした。

上記から、最近の物価上昇や生活費の増加が、多くのシニア世代の家計に影響を与えていることが考えられます。

5. まとめにかえて

老後生活の糧となる貯蓄5/6

老後生活の糧となる貯蓄

出所:William Potter/shutterstock.com

これまで、60歳代の貯蓄額と年金事情について詳しくみてきました。

前述のとおり、シニア世帯の半数以上は年金だけで生活することが難しいと回答しています。

3年連続で公的年金の受給額が増額しているものの、生活が豊かになったとは言い切れないのが現状です。

物価高などの影響で生活が厳しい状況にある高齢者が多い実情を踏まえると、現役世代は将来の公的年金のみで生活することは難しい傾向にあるでしょう。

そのため、できるだけ早いうちから「老後に向けた資金の準備」を進めていくことが大切です。

FP資格を保有するファイナンシャルアドバイザーである筆者は日々、お金に関するさまざまなご相談受けています。

なかでも、「老後に公的年金のみで生活することは難しいのではないか」という不安を感じている方が多いようです。

老後の不安を解消するために、まずは老後資金の目標額を確認することからはじめましょう。

そして「家計の資産全体のバランス」や「リスク許容度」などを踏まえたうえで、新NISAやiDeCoなど税制優遇制度を活用した資産運用について考えてみてはいかがでしょうか。

厚生労働省が2024年9月17日に公表した調査結果によると、日本にいる100歳以上の高齢者数は9万5119人となっています。

「人生100年時代」と言われる時代で、長生きしても安心できる資産計画が必要ですね。

6. 【ご参考】年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説

年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説6/6

年金に関する疑問

出所:厚生労働省、日本年金機構などの各種資料をもとにLIMO編集部作成

日本の公的年金制度は複雑で、多くの人がさまざまな疑問を抱えていることでしょう。ここでは、年金に関するよくある質問を取り上げ、その解答を解説します。

6.1 年金の主な種類と仕組みは?

日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっています。

国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する基礎年金で、厚生年金は会社員や公務員が加入するものです。
国民年金は一定の保険料を納付し、将来の年金額が決まるのに対し、厚生年金は収入に応じた保険料を支払うため、将来の受給額にも差が出ます。

6.2 「繰下げ受給」とはどんな制度?

年金の受給開始年齢を遅らせることで、受給額が1カ月につき0.7%増える「繰下げ受給」があります。

例えば、65歳から受給を開始する予定を75歳0カ月まで繰り下げると、84%増額となります。これは、長期間働くことができる人や、他の収入源がある人にとって有利な選択肢となります。

6.3 年金を増やす方法はあるのか?

年金を増やす方法はいくつかあります。自営業やフリーランスの方は、国民年金の付加保険料を支払うことで、将来の受給額を増やせます。

また、厚生年金に加入する働き方に切り替えることも一つの方法です。

さらに、老後資金を増やすという意味では、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを利用して、自身で資産運用を行うのも選択肢です。ただし、運用にはリスクがあることに注意が必要です。

参考資料

入慶田本 朝飛