3.2 在職老齢年金制度の改正の検討

在職老齢年金制度は、時代の流れに応じて何度も改正されています。近年の主な改正として
は、下記のようなものがありました。

  • 60歳から65歳までの年金停止基準を65歳以降の基準よりも厳しかったものが、全年齢で統一される
  • 支給停止の基準となる額が47万円から50万円に引き上げられる

そして現在、政府は「65歳以上の支給停止基準額のさらなる引き上げ、および完全撤廃」といった改正を検討しています。

2024年に行われた財政検証では、支給停止基準額を引き上げ、または支給停止を完全撤廃した場合についての検討を行い、改正した場合の支給停止者数の見込みと新たに年金の給付が必要になる増加額を試算しています。

基準額の引き上げや制度の撤廃を行うことで、今は支給停止を避けて就業時間などを控えている高年齢層の労働意欲が増え、日本全体の労働力増が期待されています。

一方で、年金額の調整対象者が少なくなる、または停止されなくなるため、現在は停止されている部分の年金分を政府が支給することとなり、財政面での負担が大きな課題となっています。

65歳以上の在職老齢年金の支給停止基準額を変更した場合の影響(2022年度末)

65歳以上の在職老齢年金の支給停止基準額を変更した場合の影響(2022年度末)

出所:厚生労働省「第16回社会保障審議会年金部会資料 令和6(2024)年財政検証結果の概要」