1. 65歳以上の就業者数の増加
日本の高齢化が進む中、平均寿命の伸びや健康寿命の伸びとあわせて、65歳以上の就労者数も年々増加しています。
総務省の労働力調査によると、2023年平均の65歳以上の就業者数は正規雇用、非正規雇用を合わせて543万人となっています。とくに非正規雇用は前年比12万人の増加となり、働くシニアが増えている様相がうかがえます。
2. 在職定時改定
働く高年齢層が増えることにより、給与収入がある上で老齢年金の受給もしている人口も増加しています。
厚生年金に加入をするような働き方をしながら老齢年金を受給している人にとって重要となるのが「在職定時改定」という制度です。
2.1 在職定時改定とは
在職定時改定とは、65歳以上で厚生年金に加入している状態で働いている労働者が、老齢年金の受給もしている場合に、毎年10月に前年1年間の標準報酬を基に受給年金額を見直す制度です。
以前は在職中に年金額の改定はされずに、退職時や70歳到達時に退職したときにまとめて年金額に反映されていましたが、2022年の法改正により、在職中も毎年働いた分の報酬分を厚生年金額に反映させることとなりました。
それが「在職定時改定」の制度です。
在職定時改定の目的は、就労を継続したことの効果が、退職を待たずに早期に年金額に反映されることにより、年金を受給しながら働く労働者の経済基盤の充実を図ることです。
2.2 在職定時改定の方法
在職定時改定は、以下のように行われます。
- 毎年基準日(毎年9月1日)において前年9月から当年8月までの被保険者期間の賃金を確認
- 賃金に応じて年金額を再計算
- 再計算された年金額が基準日の属する月の翌月(毎年10月)分から適用
これにより、例えば月の給与20万円で1年間働いた場合、改定後は月の年金額が約1100円ほど増額されることになります。
この制度により、在職中にも年金額を増やすことができるというメリットがある一方で、年金額が高くなることで「在職老齢年金制度」により給与収入との調整が入り、年金額が一部支給されなくなる場合もあるので注意が必要です。
次に、在職時の年金の受給でもう一つ重要な制度である、在職老齢年金制度について説明していきます。