1.1 老齢年金の繰上げ・繰下げ制度
現在の老齢年金の受給開始年齢は原則として65歳ですが、60歳から75歳の間で自由に選択することができます。60歳から64歳の間に受給を開始する場合を「繰上げ受給」、66歳以降に受給を開始する場合を「繰下げ受給」と呼びます。
繰上げ受給を選択すると、1ヶ月あたり年金額が昭和37年4月1日以前生まれの人なら、0.5%(最大30%)と減額となります。一方、繰下げ受給を選択すると、1ヶ月あたり年金額が0.7%の増額となり、最大で84%増額されます。
2. 繰上げ受給も正解な理由4選
多くの人は、年金額を減らさないために少なくとも65歳まで待ってから受給するべきだと考えているのではないでしょうか。しかし、実際には60歳からの繰上げ受給でメリットを享受できるケースも少なくはありません。
2.1 健康寿命期間の経済活動の資源となる
年金の開始年齢を考えるときに、自身の寿命を検討材料とすることも多くあります。そのとき、一般的な寿命ではなく、健康寿命を考えると、繰上げ受給をすることが有効であると考えられる場合があります。
令和5年版高齢社会白書によると、2019年時点の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳です。ですが、「日常的に介護を必要とせず、自立した生活ができる期間」である健康寿命は、男性・女性がそれぞれ72.68歳、75.38歳です。
これは、ある程度自由に動くことができてやりたいことができる期間だと言えます。健康寿命を考えた場合、年金を繰上げて早めに受給することで、60歳以降のまだ経済活動が活発な期間の生活の質や満足度が上がることが考えられます。
元気に活発な生活ができる60歳代前半での受給開始は、より充実した第二の人生を楽しむための手段となります。