3. 銀行に届出をせず預金を引き出すリスクとは

認知症の本人に代わって銀行手続きを行うことは、たとえ家族であっても、相続が発生した際に大きなトラブルの原因となる可能性があります。

たとえば、相続発生時のトラブルが最たる例です。最高裁判所の統計によると、2021年に遺産相続に関して全国の家庭裁判所が取り扱った調停件数は1万3447件となっており、相続時のトラブルは少なくないことが分かります。

本人の同意なく口座を操作すると、他の相続人から不正な資産操作と見なされ、法的なトラブルに発展することがあるほか、遺産分割時に不透明な資産移動が問題視されて、親族間の信頼関係が損なわれる恐れもあるでしょう。

成年後見などの手続きは確かに手間がかかりますが、不正な口座管理を行うと後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

相続時などに家族間で争いが生じることを避けるためにも、正規の手続きを行うことが大切です。成年後見制度などを利用して、安心して財産管理ができる体制を整えましょう。

4. まとめにかえて

これまで日本における認知症の割合や、口座凍結になった際の対処法について解説してきました。

日本の家計資産の1割に迫る認知症の方の保有資産は、高齢化社会が進む日本ではますます問題視されてくるでしょう。

自身や家族が当事者となるリスクを考え、判断能力があるうちに贈与を行ったり、成年後見制度等を利用して備えておくことが重要です。

参考資料

中本 智恵