厚生労働省は7月30日に、厚生年金の被保険者が死亡した際に遺族に支給される「遺族厚生年金」について、見直し案を公表しました。
遺族厚生年金は会社員や公務員などが亡くなった場合に、要件を満たした遺族が受け取れる年金で、今後の生活に大切な資金となるものです。
しかし、これまでの制度では、受給要件に男女差があったことから、解消するための見直し案とされています。
本記事では、遺族厚生年金の制度概要についておさらいするとともに、見直し案の具体的な内容を解説していきます。
1. 遺族厚生年金とは
遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者だった方が亡くなったときに、一定の要件を満たす配偶者や子どもなどの遺族が受け取れる年金のことです。
遺族厚生年金の受給対象者は以下の遺族で、優先順位の高い方から受給できます。
- 子どものいる配偶者
- 子ども(18歳になった年度の3月31日までにある子ども、または障害等級1級・2級の20歳未満の子ども。)
- 子どものいない配偶者(30歳未満の妻は5年間のみ受給。夫は55歳以上の方に限り受給可能だが、受給開始は60歳から。)
- 父母(55歳以上である方に限り受給可能だが、受給開始は60歳から。)
- 孫(「子ども」の要件と同じ)
- 祖父母(「父母」の要件と同じ)
受給できる遺族厚生年金額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額です。また、一定の要件を満たす場合に、「中高齢寡婦加算」や「経過的寡婦加算」がプラスされます。
- 中高齢寡婦加算:夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、同一生計の子どもがいない妻(夫の死亡後、40歳に達したときに子どもがいた妻も含む)に加算して支給される。令和6年度は、年額61万2000円。
- 経過的寡婦加算:遺族厚生年金を受給している妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受給するようになったときに、中高齢寡婦加算に代わって加算される一定額。