1.1 遺族厚生年金は男女間で差がある
現行の遺族厚生年金では、以下の2点において男女間に差が生じています。
- 「夫は働いて収入を得ることが可能」という考えのもと、55歳未満の夫には遺族厚生年金の受給権がない
- 「中高齢寡婦加算」は妻に対する制度であり、夫には同様の制度がない
近年、働く女性や共働き世帯が増加していることや社会状況などを考慮し、これまでの老齢遺族年金制度の男女差を解消する必要があるとの考えから、今回の見直しが行われました。
なお、遺族基礎年金の受給要件には男女差がなく、妻も夫も同じ要件となっています。
2. 遺族厚生年金の見直し案の内容
遺族厚生年金の具体的な見直し案について確認していきましょう。
2.1 子のない配偶者は夫・妻ともに5年間の有期給付
配偶者が亡くなった子どものいない20代から50代の方に対して、男女や年齢に関わらず、5年間の有期給付となります。
これまでは、夫が働き妻が家庭に入るという形態の世帯が多かったため、夫が亡くなった場合に女性が新たに働き始めることが困難でした。
しかし、現在は共働き世帯が増えており、夫が亡くなった後も働き続けることが可能なため、遺族厚生年金の支給においても、男女差を解消することが望ましいと言う理由からとされています。
ただし、実際には就労状況はまだ男女間で差がある状態であるため、妻の有期給付の引上げは20年をかけて段階的に行われる予定です。