はじめに

ビジネスパーソンにとって、管理職(マネージャー)は目指す目標のひとつであり、自身のビジネスキャリアを発展させる上での登竜門ともいえます。しかし、時代と共に管理職(マネージャー)に求められる役割や能力・課題・心構え、課題は変化しつつあります。この記事では、これからの管理職(マネージャー)に求められる姿、資質などについて、紹介していきます。

目次

1. 管理職(マネージャー)とは?その定義は?
2. 管理職(マネージャー)とリーダーの違い、目指すスタイルは?
3. 管理職(マネージャー)に求められる役割や姿は?
4. 管理職(マネージャー)に求められる能力はどうあるべきか?
5. 管理職(マネージャー)でいるためには、スキル向上が不可欠?
6. 管理職(マネージャー)の心構えはどのように?
7. 管理職(マネージャー)が大切にするポイントは何か?

1. 管理職(マネージャー)とは?その定義は?

管理職(マネージャー)とは会社の組織の中で「決裁権(権限)」を持つ役職を指します。

「役職名がついたら、それは管理職(マネージャー)」と勘違いする人も多いのですが、肩書きとは関係なく、また業務の大小関係なく、会社から一定の権限移譲を与えられている職務をしている人全般が、一般的には管理職(マネージャー)と呼ばれる人になります。ですから、企業によっては、決裁権が与えられていれば、課長や部長だけではなく、主任・係長でも管理職(マネージャー)となります。

外資系企業で用いられていた管理職(マネージャー)という言葉が、日本の企業に浸透してきたのは、1990年後半から2000年にかけてといわれています。それまでの日本の企業では、「社長」や「部長」など、漢字での役職名がほとんどでしたが、経営のグローバル化が進み出したこの時期を境に広まりをみせはじめ、現在では、多数の企業において、この呼び方が定着しています。

さて、管理職(マネージャー)の条件である、会社からの権限移譲についてですが、最近では、部門や部署ごとに、現場に近い下位の管理職(マネージャー)に決裁権を与えて、業務をよりスムーズに進めようとする、エンパワメントが、多くの企業で推進されるようになっています。また、これに伴い、入社してからさほど年数のたっていない人が、マネージメント業務の一部を担当するケースもみられるようになってきました。これは、企業が将来の管理職(マネージャー)候補者を育てるための一環として、行われていることが多いようです。

2. 管理職(マネージャー)とリーダーの違い、目指すスタイルは?

管理職(マネージャー)とよく似ている言葉に、「リーダー」があります。

リーダーとは、役職に関わらず部下や上司を含めた共に業務を進める人たちの中において、指導者的役割を担う人に対する呼称です。管理職(マネージャー)は、企業が業務に関する権限を認め、任命するものですが、リーダーは、一緒に業務を行うメンバーから、「この人は、私たちの先頭に立つ人だ。」と認識されることによって決まります。つまり、組織としてその役割を認められているか否かが、管理職(マネージャー)とリーダーの違いということになります。

ただ、そうはいっても、実際の企業組織においては、管理職(マネージャー)=リーダーであるケースもよく見られます。というのも、組織図の上では管理職(マネージャー)はリーダーである必要はないのですが、実際の現場においては、会社から譲渡された権限をふりかざして命令を下すだけの管理職(マネージャー)では、業務に対する理解者や支援者を得る事ができず、円滑に業務が進まないことが多いからでしょう。

かつての日本企業では、上から指示を出すだけの権限重視型であった管理職(マネージャー)が多かった時代もありましたが、現在は、上司と部下、また役職に関係なく、「この人についてゆきたい」と思わせてくれるような、リーダー型管理職(マネージャー)が求められています。このため、管理職(マネージャー)は、メンバーから理解と信頼を得るために、彼らと頻繁にコミュニケーションを取り、彼らの言葉に耳を貸し、彼らの要望にできる限り応えることが大切なのかもしれません。

3. 管理職(マネージャー)に求められる役割や姿は?

管理職(マネージャー)に関する理論としては、1946年にピータードラッカー氏が発表した「マネージメント論」がよく知られています。これによると、「マネージメントは組織の成果を上げさせるための道具・機能」と定義されます。

管理職(マネージャー)は1人でチームの業務全てを遂行することはできません。このため、チームメンバーの力を結集し、最大限の成果をあげることができるよう、組織の業務の設計を行います。

なお、組織の業務の設計の具体的な手法としては、MBO「Management By Objectives」と呼ばれる目標管理制度が、よく知られています。これは、目標を期ごとに設定したうえで、以下のようにアクティビティを管理するというものです。
・部署としての目標を、個々のメンバーの課題として落とし込み、周知理解させる。
・メンバーの進捗状況を把握して、目標の達成度合いを測定する。
・必要なプロセスでは、管理職(マネージャー)が自ら直接関わる。

このMBOの導入により、個々のメンバーの成長とチームとしての成果が期待できるだけではなく、管理職(マネージャー)自身が、企業、部署独自の業務をしっかりと理解することができるようになるという効果も見込むことができます。

ただ、MBOには、昇進が順送り人事になる傾向があるというデメリットもあります。有能なメンバーが昇進して管理職(マネージャー)になるのは、とても喜ばしいことですが、有能なメンバーを放出することで、チームの力が落ちてしまうことは、組織としては、あまり歓迎はできません。そこでMBOだけに頼らないよう、メンバーの採用面でも、管理職(マネージャー)は積極的に関わっていくことが必要といえるでしょう。また、普段から、チームメンバーが昇進でチームから離れる場合を想定した組織づくりを心掛けておくことも大切です。

以上のように、管理職(マネージャー)に求められる役割は、組織の長としてマネージメントを機能させること、といえるかもしれません。

4. 管理職(マネージャー)に求められる能力はどうあるべきか?

管理職(マネージャー)に求められる代表的な能力として、「リーダーシップ」が挙げられます。リーダーシップとは、メンバーに「この人についてゆきたい。」と思わせる能力です。リーダーシップがなく、指示命令だけをする管理職(マネージャー)の下では、メンバーは必要最低限のことしか実行しない傾向があります。

では、このリーダーシップを身につけるには、どうしたらよいのでしょう。

もし、自身のリーダーシップの能力が低いと感じている方がいたら、まずは、コミュニケーション能力を向上させることをおすすめします。というのも、チームメンバーとのコミュニケーションがしっかりととれるようになることで、業務上での意思疎通を円滑にすることが期待できるからです。スムーズな意思疎通によって、お互いの信頼感が増すことで、メンバーは管理職(マネージャー)の意思をよく理解し、自発的に動いてくれるようになるかもしれません。

また、コミュニケーション能力が向上すると、メンバーだけではなく、経営者との意思疎通もスムーズにいくことが期待できます。組織の状況を正しく伝えることで、管理職(マネージャー)は経営者に対し、経営判断材料を提供することができます。最終的に、それは経営を動かすことにつながりますので、管理職(マネージャー)は、組織において、一段上のレベルである「経営の参謀的な機能」としての役割を果たすことも、可能となるのです。

コミュニケーション能力をはじめ、管理職(マネージャー)に求められる様々な能力については、そのスキルがあるか無いかが重要なポイントとなります。しかし、スキルには持って生まれたものもあれば、管理職(マネージャー)の業務を行いながら身につくものもあります。ただ、管理職(マネージャー)に求められるスキルの大半は後者になります。まずは、管理職(マネージャー)として自己の能力を客観的に判断し、必要とされるスキルを洗い出してみては、いかがでしょうか。 

5. 管理職(マネージャー)でいるためには、スキル向上が不可欠?

管理職(マネージャー)には、様々なスキルが要求されるという話をしました。ここで、問題になるのが、「どのようにスキル向上を図っていくか。」という点です。

管理職(マネージャー)のスキル向上を図るには、様々な方法が考えられますが、まずやっておきたいのは、「基礎を見直す。」ということです。というのも、近年の企業では、業務の増大に伴い、管理職(マネージャー)の仕事量が増加している傾向にあり、これがメンバーへのマネージメントを弱める要因となっていることが多いからです。これは、マネージメントの本質である「人を通じて成果」をあげることができなくなる危険をはらんでいます。

基礎理解がないままに我流のマネージメントをすすめると、職場機能が停滞する可能性が高くなります。特に新任の管理職(マネージャー)は、そのことを理解したうえで、マネジメントをすすめるようにしたほうがよいでしょう。なお、ある程度キャリアのある管理職(マネージャー)についても、適切なタイミングで自己を振り返り、基本的なフレームを見直しておくことが大切です。

なお、管理職(マネージャー)のスキル向上においては、職場環境の変化による多様性にも目を向け、ビジネスシーンの変化を感じ取り、柔軟な対応をとるための、以下のような能力も求められます。

方針策定力・課題解決力

的確に内外環境を捉え、組織方針やその課題を洗い出して柔軟に変更する能力。

リーダーシップ

行動方針を固め、メンバーが主体的に動く環境を形成する能力

メンバー育成力

自ら考え、行動できる人材を育成する能力

メンバーの育成をしつつ、チームが円滑に動く工夫を積み重ねることで、管理職(マネージャー)自身のスキルも向上するのかもしれません。 

6. 管理職(マネージャー)の心構えはどのように?

将来、管理職(マネージャー)を目指すビジネスパーソンにとって、「管理職(マネージャー)として、求められる心構えは何か。」という点は、とても気になることではないでしょうか?

以下、代表的なポイントについて、みてみましょう。

メンバーを守る。

メンバーが失敗をした場合、管理職(マネージャー)は、「とにかく、チームメンバーを守る。」という態度を示すことが大切です。「私は知らない、メンバーが悪い。」というスタンスでは、メンバーの気持ちが離れてしまうかもしれません。

メンバーを叱咤激励する。

時には、メンバーに対して、管理職(マネージャー)が叱咤激励をすることも必要です。ただ、ここで注意したいのは、あくまで「部下の育成」のために行う、という点です。「あれが悪い、これが悪い。」と悪いところばかりを指摘して叱るのではなく、「褒めて育てる。」を念頭に置き、まずはよいところを褒めるように心がけるようにするとよいでしょう。

3G(現物、現場、現実)主義を徹底し、動向を予測する。

管理業務がメインである管理職(マネージャー)にとって、現場の実態把握は、後回しになりがち。管理の原則である現物、現場、現実の3G主義を徹底するように、心がけましょう。現状をしっかりと把握しておくことは、問題点の早期発見、早期対応につながります。また、素早い対応をすることで、管理職(マネージャー)は、メンバーの信頼を得ることができるでしょう。最終的には、能力以上の成果を発揮できるチームとして、成長することも期待できます。

管理職(マネージャー)自身のストレスコントロール。

メンバーへの細やかな気配りを続けていると、多くの場合、管理職(マネージャー)自身に、精神的ストレスが溜まってきます。現代ビジネスのマネージメントにおいて、ストレスコントロールは重要な要素とされています。上手にストレスを開放することで、業務に支障が出ないように心がけましょう。

7. 管理職(マネージャー)が大切にすべきポイントは何か?

では次に、チームの運営において、管理職(マネージャー)が大切にすべきポイントについて、考えてみましょう。

人材を育てること

人材は「人財」と呼ばれることもあるほど、企業にとっても財産ですが、社会にとってもそれは同じです。かつて経営の神様と言われた松下幸之助氏は、「人材は、社会からの預かり物」と表現しました。この言葉が示すように、人材育成こそが、管理職(マネージャー)の最も重要な職務といえるでしょう。

信頼できる職場環境をつくること

世界経済のグローバル化が進んでも、良い人材が育つ会社の条件は、「上司と部下がお互いを認め合うこと。」とされています。これは日々の生活にもつながることで、社会も皆が支え合い、その恩恵で人間は生きていくことができます。大切にすべき人に感謝する気持ちを持ちながら、穏やかな気持ちで業務を行なうことができるよう、職場の環境を整えることも、管理職(マネージャー)の大切な仕事といえます。

担当する部署が継続的にビジネスで成果をあげていくこと

ビジネスの成果は、会社の業務を継続的に行うことにつながります。そしてそれは、社員の生活を支えることにもつながります。このため、自身が管理する部署が、成果を上げ続けることができるよう、努力をすることも、管理職(マネージャー)に与えられた、重要な役割といえるでしょう。

時代の変化に対応し、企業組織が変化することは、とても大切なことです。しかし、企業を構成するのは人間です。管理職(マネージャー)が、人材を大切にするということを忘れずに行動することが、ビジネスにおいては、大切なことなのかもしれません。

おわりに

管理職(マネージャー)の業務は、ビジネスにおけるグローバル化が叫ばれるようになって以降、大きく変化したといわれています。時代の流れを掴むことは大切ですが、管理職(マネージャー)にとっての本質は、部下や上司と普段からコミュニケーションを取り、信頼を築くことは時代が移っても変わらないものといえるでしょう。変える部分と変わらない部分を理解し、柔軟に対応することが管理職(マネージャー)にとって、もっとも重要なことのひとつといえるのかもしれません。

LIMO編集部