はじめに

激しく変化する現代の経済環境において、組織やチームを牽引するリーダーの必要性はますます強くなっています。
この記事では、リーダーに求められる役割や心構えをはじめ、混同されがちなマネージャーとの違いについても解説しています。

目次

1. リーダーとは何か
2. リーダーとマネージャーの違いについて
3. リーダーに求められる役割は?
4. リーダーが持つべき能力は?
5. リーダーが持つべき心構え
6. リーダー育成に関する課題
7. リーダーが具体的にすべきことは

1. リーダーとは何か

リーダーとは、組織を率いる人を指します。リーダーと聞くと、優れたカリスマ性を持ち、メンバーを牽引していくようなイメージがありますが、現代に求められているリーダー像は、そのようなスタイルから大きく変化しているようです。

優れたリーダーに求められる条件は何か、という論争は古くから行われてきました。

例えば、単純労働が基本であった1900年代では「統率型リーダーシップ」が求められていました。これは、中央から組織の末端に至るまで、全てをリーダーがコントロールすることで、生産効率を劇的に上昇させることができたからです。

しかし、機械やコンピューターが単純労働を担うようになった現代、人間は機械ができない精神的、知的な仕事を行うようになっています。メンバーひとりひとりが、自ら効率の良い方法を考え、それに従って作業を行いますから、従来の統率型リーダーシップによって、リーダーの考えややり方を押し付けてしまうと、メンバーは反発し、やる気を失ってしまいます。

そこで登場してきたのが「サーバントリーダーシップ」という考え方です。これは、リーダーが進んで奉仕者になることで、メンバーが主体的に行動できるようにするというものです。リーダーがメンバーひとりひとりの自主性を尊重しつつ、チーム全体を牽引することで、お互いの信頼関係が構築しやすくなるというメリットがあります。

求められるリーダー像は、仕事の変化だけではなく、情報や価値観の変化にも大きく左右されます。現代において、職場の情報伝達がトップダウン型から対話型へと変化し、メンバーの仕事に対する意識も、単なる給料稼ぎだけではなく、やりがいや存在価値にも重きが置かれるようになっています。これにより、求められるリーダー像も刻々と変化しているということが、いえるのではないでしょうか。

2. リーダーとマネージャーの違いについて

よく混同されがちな、リーダーとマネージャーという言葉ですが、両者の違いは一体何なのでしょうか。

簡単に言うと、自ら進むべき道筋を示すのがリーダー、メンバーが高いパフォーマンスを発揮できるよう支援するのがマネージャーです。加えて言うなら、リーダーは、メンバーが「この人が私たちのリーダーだ。」と認知することによって成立するのに対し、マネージャーは、所属する組織から「あなたはマネージャーだ。」と任命されてはじめて成立するという違いもあります。

そもそも、組織には価値観も個性もばらばらのメンバーが集まっています。協力して同じ目標に向かって進むためには、チームがどの方向に向かって進むべきかを示す役割を持った人が必要になります。それがリーダーなのです。

このため、リーダーには、メンバーが共感し、共有できるメッセージやビジョンを示すことが求められます。また、このほかにも、チームを一体化させるということも、リーダーの重要な仕事になります。メンバーに偉そうな態度をとったり、闇雲に命令するだけでは、リーダーとしては不十分なのです。

一方、マネージャーの役割は、メンバーひとりひとりの能力を見極め、最大限のパフォーマンスができるように支援や役割分担をすることになります。単に業務を振り分けるのではなく、組織全体とチームを見回し、適切な人材を的確な場所に配置するということが求められるのです。また、メンバーのモチベーションを高め、彼らのパフォーマンスを維持することや、メンバーをしっかりと育成するなど、チームを見守り、育てるという役割も求められることになります。

組織によっては、リーダーとマネージャーの役割を一人に兼ねさせるというケースもありますが、そもそも両者の役割は異なります。リーダーとマネージャーを兼任する場合は、「自身が今、どちらの立場としての役割を求められているのか。」をしっかりと認識しながら、それぞれの役割をこなす必要があるのかもしれません。

3. リーダーに求められる役割は?

一般的に、リーダーには以下の4つの役割が求められているといわれています。

方向性を示す

メンバーが共有できるビジョンや価値観、戦略を確立することを表します。多様な個性を持つメンバーが団結するには、「自分たちがどこに向っているのか」ということをリーダーがしっかりと指し、全員が同じ方向を見据えて進むことが必要です。

組織を整える

掲げた目標達成に向け、的確な人員配置や意思決定のプロセスを整理し、組織の中身やシステムを整えることを指します。これにより、チームとして、最大限の結果を引き出すことが期待されます。

エンパワメントを推進する

「権限委譲」や「能力開花」訳されるエンパワメント。メンバーが主体的に動くためには、これを積極的に進める必要があるといえます。どんなに素晴らしい目標を掲げても、リーダーがそれを叫んでいるだけではメンバーはついてきません。メンバーの情熱や才能を引き出し、能動的に働くことができるよう鼓舞することが、エンパワメントの推進につながります。

模範となる

どんなに優れた能力があっても、リーダーが不誠実ではメンバーはついてきません。自ら積極的に動き、お手本となる態度を示すことで、メンバーの信頼を獲得することが期待できます。

4. リーダーが持つべき能力は?

では、リーダーに求められる能力についてはどうでしょうか?一般的には、以下の3つの役割が求められるといわれています。

仕事を分配、調整する能力

リーダーは、メンバーのひとりひとりについて、力量や適性を見極め、無理と無駄がないように仕事を分配しなければなりません。このため、タスクの進捗状況などを正確に把握するのはもちろん、個々のメンバーと信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルも重要となります。なかなか自分のことを話せない人から話を聞き出したり、逆に自分主体のことしか言えない人について、他のメンバーとの調和を促したりといったスキルも重要といえるでしょう。

広い視野を持つ

メンバー全体の動きを把握しつつ、必要なサポートを行うために、リーダーにとって、広い視野は不可欠な能力と言えるでしょう。一歩引いて、仕事の現状を広い視野で見ることで、チームの課題点を見つけやすくなります。なお、課題が見つかったあと、課題をクリアするためのプロセスを明確にできるということも、リーダーにとって重要なスキルといえるでしょう。

イレギュラーな事態に対処できる力

ビジネスの場では予想外の変化や、予測不能な事態に遭遇することがよくあります。このようなとき、リーダーには、自ら責任を持ち、事態に対応するためメンバーに適切な指示を出すということが求められます。いざというときに、説得力のある指示を行うためには、ことあるごとに自分を振り返り、悪いところを改善するなど、チーム内の1メンバーとしても秀でている存在であるよう努力する必要があるのかもしれません。

5. リーダーが持つべき心構え

リーダーとして、次のような心構えを持っておくことは、とても大切なことです。

人の話を聞く

どんなに優秀な人であっても、相手の話を途中で打ち切ってしまうようでは、信頼を得ることはできません。相手の話を最後まで聞き、しっかりと理解したいという姿勢を示しましょう。なお、人の話を聞くときの態度では、頭ごなしに相手の考えを否定したり、途中までしか聞いていないのに、勝手に結論付けるようなことはしないように気を付けることも必要です。

明るく前向きな職場を作る

多くの場合、リーダーの在り方がそのままチームの雰囲気になります。暗い雰囲気は、メンバーの士気を半減させてしまうものです。チームにとって辛い案件であっても、明るい雰囲気で仕事を進めることができれば、良い結果につなげることが期待できます。

明確な目標を掲げる

チームとして目指すゴールがはっきりしていないと、メンバーは、何をどうすればよいのかわからなくなります。リーダーは、最初の段階からチームの明確な目標を掲げそれに向かって進むという姿勢を示すことが大切です。目標に向かうための細かな過程は軌道修正することがありますが、目標そのものが、その時々で変わってしまうようなことがないように気をつけましょう。

リーダーのポジショニングを明確にする

リーダーはメンバーに対して中立でなければなりません。メンバー全員と合わせることは、非常に難しいことですが、だからといって、リーダーが、誰かひとりに肩入れするようなことがあると、チームの輪は乱れてしまいます。メンバー同士が協力して仕事を進めるためにも、仕事に自分の好き嫌いを持ち込むようなことは、絶対にしないように心がけましょう。

リーダーが、メンバーの話に耳を傾け、目指すゴールを常に掲げることで、メンバーは同じ方向を向くことができます。また、予想外の事態が起こっても、リーダーが「ブレない」ことで、メンバーは安心して仕事に打ち込むことができるでしょう。

6. リーダー育成に関する課題

現在、多くの企業が、中堅社員のリーダー育成に課題を抱えているといわれています。

よく見られるのは、組織のフラット化が、リーダー育成を妨げているというケースです。組織のフラット化とは、中間管理職層を排除し、経営と現場を直接結び付けるという組織改革です。情報の流れが早くなる分、意思決定がスムーズに行われるというメリットがありますが、フラット化した組織ではリーダーポジションが形骸化しやすいというデメリットがあります。これは、リーダーに昇格したとしても、それは形だけのため、リーダースキルを磨くことができない上、自分がリーダーであるという自覚も育ちにくくなってしまうからです。

組織のリーダーになることに興味がない人が増えていることも、リーダー育成の大きな課題といえます。これは、長引く不況のせいで、企業に帰属意識を持たない従業員が増えているためです。ビジネスパーソンとしての将来性に不安を覚え、会社から一定の距離をおき、1プレイヤーとして自立することだけに目が向いてしまうのでしょう。

リーダーになるための能力を育てるには、座学だけでは不十分です。ケーススタディや実務を通した教育プログラムが必要になります。そして、それには、ある程度の期間がかかります。しかし、現実的には、リーダーになった途端に、リーダーとしての「こうあるべき」という心構えや態度を要求されてしまうことが殆どです。企業や組織の経営陣側に、「リーダー育成には、長期的な取り組みが必要」という認識が不十分だということも、大きな課題といえるのかもしれません。

7. リーダーが具体的にすべきことは?

この記事では、「リーダーの役割は、メンバーをまとめ、目標を達成すること」という話をしてきました。では、これを実践するために、具体的には何をしたらよいのでしょうか?いくつか例を挙げてみます。

メンバーのやる気を引き出す。

メンバーがいてこそのリーダーです。リーダーだけがやる気になっても、チームとしての成果は、なかなかでません。まずは、メンバーのやる気を引き出すようにしたほうがよいでしょう。これには、威圧的な態度をとったり、頭ごなしに指示を出すのではなく、メンバーの主体性を引き出すように立ち回ることが大切です。

とはいえ「頑張れ」と言うだけでは、メンバーは動いてくれません。

「目標に対する具体的な道筋を示す。」「スモールステップで目標を設定する。」などメンバーがやる気を出しやすいよう、指示の与え方を工夫しましょう。

メンバーの育成

これまで述べてきたように、メンバーの育成も、リーダーの大切な役割です。メンバーが、自分で動くことができるよう、指示の与え方などを工夫しましょう。

例えば、「メンバーの能力に応じて作業を任せる。」「指示を出すときは、理由や意図を十分に説明し、お互いの考えを共有する。」といった具合です。また、メンバーに仕事を任せるときは、100%の結果を求めるのではなく、「70%の達成率で十分」など、リーダー自身の中でのOKラインを定めておくことも大切です。

なお、指示の与え方や指導方法を工夫する際は、充分に考えて行うことをおすすめします。というのも、よかれと思ってしたことが現状にあっておらず、知らないうちにメンバーからの評価が下がっていた、という事態になってしまうこともあるからです。特にジェネレーションギャップが大きいときは要注意で、不況時代しか知らず、頼れるものは自分だけ、という感覚の若手に対して、中堅社員が会社への忠誠心を要求する、といったようなことをしてしまうと、いつまで経ってもすれ違いが続いてしまうことになります。

大切なのは、メンバーを変えようとすることではなく、リーダーが自ら変わろうという意識を持つことではないでしょうか。そうすれば、相手を見る目も変わり、自然とコミュニケーションがとれるようになるのかもしれません。

おわりに

リーダーに必要な能力は、「チームを牽引する」ことだけだと考えられがちですが、実はそれだけではありません。メンバーとしっかりとコミュニケーションをとり、適切な仕事を割り振ることで、メンバーがより主体的に動けるような環境を作るということも、とても大切な能力です。

現在リーダーとして活躍している人、将来リーダーになりたい人ともに、自分にはそのような能力が備わっているのか、また能力が足りないと感じる場合はどうしたらよいのか、ということについて、適宜振り返ってみると、よい結果につながるかもしれません。

LIMO編集部